SaaSの機能利用率は、単に「その機能を使ったユーザーの割合」を見るだけでは不十分です。誰を対象に、どの期間で、どの操作を利用とみなすかを決めたうえで、利用率・利用頻度・継続率などを組み合わせて分析します。
基本的には、機能ごとの利用状況を計測し、顧客やユーザーの属性別に比較します。その後、利用率が低い理由を調べ、機能改善・導線改善・オンボーディング改善などの施策につなげます。
SaaSの機能利用率とは何か
SaaSの機能利用率とは、一定の対象者のうち、対象期間中に特定の機能を利用したユーザーや企業の割合です。一般的な計算式は次のとおりです。
機能利用率 = 対象期間中に機能を利用した人数または企業数 ÷ 分母となる人数または企業数 × 100
たとえば、月間アクティブユーザーが1,000人いて、そのうち300人がレポート機能を使った場合、月間のユーザー機能利用率は30%です。
ただし、個人向けSaaSと法人向けSaaSでは、分母を変える必要があります。個人向けならユーザー単位、法人向けなら契約企業単位や契約内の利用者単位で見るなど、サービスの利用実態に合わせて設定します。
最初に決めるべき機能利用率の条件
機能利用率を比較できる数値にするには、対象者・期間・利用の定義を先に固定します。これらが曖昧なままだと、同じ機能でも計算するたびに結果が変わります。
分母をユーザーにするか企業にするか
個人の利用状況を知りたい場合はユーザー単位、契約企業への定着状況を知りたい場合は企業単位で集計します。
| 集計単位 | 計算例 | 分かること |
|---|---|---|
| ユーザー単位 | 機能を使ったユーザー数 ÷ アクティブユーザー数 | 利用者の広がり |
| 企業単位 | 機能を使った企業数 ÷ 利用中の契約企業数 | 契約単位での導入状況 |
| 契約内ユーザー単位 | 機能を使ったユーザー数 ÷ 契約企業に所属する対象ユーザー数 | 1社内での利用浸透度 |
たとえば、1社に100人の利用者がいて、そのうち1人だけが機能を使っていても、企業単位では「利用企業」と数えられます。この場合、企業利用率は高く見えても、社内への浸透率は低い可能性があります。
集計期間を決める
日次、週次、月次のどれで集計するかは、機能の利用頻度に合わせて決めます。毎日使う機能なら日次や週次、月に数回使う機能なら月次や四半期で見る方が実態を捉えやすくなります。
- 日次:日常的に使う機能の利用状況を確認する
- 週次:週単位の業務で使う機能を確認する
- 月次:請求、レポート、締め処理など月に数回使う機能を確認する
- コホート別:登録月や契約開始月ごとの定着を比較する
短い期間だけで判断すると、利用頻度の低い重要機能が「使われていない」と誤解されることがあります。
「利用した」とみなす操作を定義する
画面を開いただけで利用とみなすのか、データを登録・編集・出力した時点で利用とみなすのかを決めます。機能の目的に近い操作を利用イベントとして設定することが重要です。
| 機能の例 | 利用イベントの例 |
|---|---|
| 検索機能 | 検索を実行した |
| レポート機能 | レポートを作成、保存、閲覧した |
| 連携機能 | 外部サービスとの連携を完了した |
| 共有機能 | 他のユーザーへ共有した |
| 自動化機能 | 自動処理を設定し、処理が実行された |
機能の価値につながる操作を区別せず、「画面を表示した」だけで利用者に含めると、実際には使いこなしていないユーザーまで利用者として集計することになります。
機能利用率を分析する手順
分析は、利用目的を決めてからデータを確認し、最後に改善施策へつなげる順番で進めます。
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分析の目的を決める
「使われていない機能を見つけたい」「有料プランの価値を確認したい」「解約しやすい顧客の兆候を見つけたい」など、分析の目的を一つずつ設定します。
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機能と利用イベントを一覧化する
分析対象の機能ごとに、利用とみなす操作、関連する画面、成功状態を整理します。機能を一度使っただけで目的を達成できるものと、継続利用が前提のものを分けます。
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対象者と分母を設定する
ログインしたユーザー、契約中の企業、対象プランのユーザーなど、分母の条件を明確にします。対象外のプランや、利用開始前の顧客を含めるかどうかも決めます。
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利用率を計算する
期間ごとに、機能を利用したユーザー数または企業数を集計します。必要に応じて、初回利用率と継続利用率を分けて計算します。
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属性別・期間別に比較する
プラン、契約期間、業種、企業規模、導入経路、利用開始月などで分けて比較します。全体平均だけでは、特定の顧客層で起きている問題を見落とすことがあります。
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利用率以外の指標を確認する
利用回数、利用日数、利用ユーザー数の広がり、機能利用後の継続率などを確認します。利用率だけで機能の価値を判断しないようにします。
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低利用の理由を調査する
操作ログだけでは理由を特定できないため、画面上の離脱箇所、検索や問い合わせの内容、顧客へのヒアリングなどを組み合わせます。
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改善施策を実施し、同じ条件で再計測する
説明文の改善、導線変更、初期設定の簡略化などを行った後、施策前と同じ定義で数値を比較します。定義や対象期間を変えた場合は、単純比較しないようにします。
機能利用率と一緒に見るべき指標
機能利用率は「どれだけの人が使ったか」を示しますが、「どれだけ役に立ったか」や「なぜ使わないか」までは分かりません。次の指標を組み合わせると、判断しやすくなります。
初回利用率
初回利用率は、対象期間中に初めて機能を使ったユーザーの割合です。新規ユーザーが機能を見つけられているか、初期設定を完了できているかを確認するのに向いています。
初回利用率 = 期間中に初めて機能を使ったユーザー数 ÷ 対象期間中の新規ユーザー数 × 100
継続利用率
継続利用率は、一度使ったユーザーが次の期間にも同じ機能を使った割合です。初回利用率が高くても継続利用率が低い場合、試しに使われているだけで、日常業務に定着していない可能性があります。
利用頻度と利用日数
利用者1人あたりの利用回数や、期間中に利用した日数を確認します。利用率が同じでも、1回だけ使った人が多い場合と、毎週使う人が多い場合では、機能の定着度は異なります。
たとえば、次のように分けると利用の深さを把握できます。
- 期間中に1回だけ利用したユーザー
- 複数回利用したユーザー
- 複数の週または月にわたって利用したユーザー
機能の利用範囲
複数の機能を使っているかどうかも重要です。1つの機能だけを使うユーザーと、主要機能を組み合わせて使うユーザーでは、サービスとの関わり方が異なることがあります。
ただし、利用機能数が多いほど必ず良いとは限りません。契約プランや業務内容によって必要な機能は異なるため、顧客の目的に合った利用かどうかを確認します。
利用後の継続・解約・成果指標
機能を使ったグループと使っていないグループで、契約継続率、解約率、問い合わせ数、業務完了率などを比較します。
ただし、機能利用と継続率に差があっても、それだけで「機能を使ったから継続した」とは断定できません。利用意欲の高い顧客が、その機能も使っているだけという可能性があるためです。比較するときは、契約期間やプランなどの条件もそろえて考えます。
機能利用率を切り口別に比較する方法
全体の利用率だけでは、どの顧客に問題があるのか分かりません。次の切り口で分けると、改善対象を絞り込みやすくなります。
| 切り口 | 確認できること |
|---|---|
| 料金プラン | 特定プランだけ利用率が低くないか |
| 契約開始からの期間 | 導入直後に使われるか、時間がたつと定着するか |
| 企業規模 | 少人数企業と大企業で使い方が異なるか |
| 業種・職種 | 業務内容によって必要性が変わるか |
| 導入経路 | 営業支援や紹介など、導入経路で初期利用に差があるか |
| 利用環境 | ブラウザ、アプリ、端末などで操作上の差があるか |
たとえば、全体の機能利用率が20%でも、新規顧客では5%、導入支援を受けた顧客では40%という差があるなら、機能そのものよりも初期説明や導線に改善余地があると考えられます。これはデータから導く推論であり、画面上の行動や顧客の声で確かめる必要があります。
利用率が低いときに確認する原因
機能利用率が低いからといって、すぐに「不要な機能」と判断することはできません。利用されない理由を、次のように分けて調べます。
- 機能を見つけられていない:メニューの位置や名称が分かりにくい
- 使い始める条件が多い:初期設定、データ登録、権限設定などに手間がかかる
- 使い方が分からない:説明や例が不足している
- 利用権限がない:契約プランやユーザー権限によって利用できない
- 使う場面がない:対象ユーザーの業務に機能が合っていない
- 操作途中で止まっている:エラー、入力項目、処理時間などが障壁になっている
- 代替手段を使っている:外部ツールや手作業で目的を達成している
確認するときは、機能ページの表示回数、ボタンのクリック、設定開始後の離脱、エラー発生、問い合わせ内容を順番に見ます。機能ページまで到達しているのに操作完了が少ないなら、認知よりも操作や設定に問題がある可能性があります。
分析でよくある失敗
ログインを機能利用として集計する
ログインはサービスを開いたことを示しますが、特定の機能を使ったことまでは示しません。機能に対応する操作イベントを別に記録します。
全ユーザーを分母にする
その機能を契約していないプランのユーザーや、対象業務を担当しないユーザーまで分母に含めると、利用率が実際より低く見えます。利用可能な対象者を分母にする場合は、条件を明記します。
一度使っただけで定着と判断する
初回利用は、興味を持ったことや試したことを示すだけかもしれません。初回利用率と継続利用率を分け、利用日数や利用回数も確認します。
機能数の多さを価値と判断する
多くの機能を使っていることが、その顧客にとって成果につながっているとは限りません。顧客の目的や業務成果と結び付けて評価します。
利用率の差を原因と断定する
機能利用者の継続率が高くても、機能利用が継続の原因とは限りません。契約期間、導入支援の有無、企業規模などの条件をそろえ、必要に応じてアンケートやインタビューで確かめます。
分析結果を改善施策につなげる考え方
分析後は、利用率の高低だけで優先順位を決めず、機能の重要度と改善可能性を組み合わせます。
| 状況 | 考えられる対応 |
|---|---|
| 利用率が低く、操作開始後の離脱が多い | 入力項目、エラー、画面の流れを見直す |
| 機能ページへの到達が少ない | メニュー、導線、機能名、案内方法を見直す |
| 初回利用率は高いが継続率が低い | 利用場面の説明、成果の見せ方、継続利用のきっかけを改善する |
| 特定プランだけ利用率が低い | 利用条件、権限、提供範囲、プラン内の案内を確認する |
| 利用率は高いが成果が見えない | 利用回数だけでなく、目的達成や業務成果を測る |
改善施策を比較する場合は、施策を行ったグループと行っていないグループを分ける方法や、施策前後を同じ条件で比較する方法があります。比較方法によって確認できることが異なるため、数値の差を施策の効果と断定できる条件がそろっているか確認します。
SaaSの機能利用率分析でまず行うこと
最初に、分析対象の機能を一つ選び、対象者・集計期間・利用イベント・分母を文書化します。そのうえで、初回利用率、継続利用率、利用頻度を集計し、プランや契約開始時期などの切り口で比較します。
機能利用率は、低いから不要、高いから成功と単純に判断する指標ではありません。利用率を入口にして、利用の深さ、継続、顧客の目的達成まで確認すると、改善すべき場所を具体的に判断できます。







