SaaSの利用率が低下する主な原因は、導入目的と実際の業務が合っていないこと、使い方が定着していないこと、操作や運用に負担があることです。ほかにも、利用対象者の変更、機能や権限の問題、サービスへの不満、業務プロセスの変化などが影響します。
まずは「ログイン数が減った」のか、「主要機能の利用が減った」のか、「契約ユーザーのうち利用者が減った」のかを分けて確認すると、原因を特定しやすくなります。
SaaSの利用率が低下する主な原因
導入目的や利用するメリットが共有されていない
利用者が「なぜこのSaaSを使うのか」を理解していないと、従来の方法に戻りやすくなります。導入担当者や管理者だけが目的を把握し、現場には単に「使ってください」と伝えている場合に起こりやすい原因です。
たとえば、SaaS導入の目的が「情報共有の迅速化」であっても、利用者がその効果を実感できなければ、入力作業だけが増えたと感じる可能性があります。
操作方法や利用手順が分かりにくい
画面の構成、用語、入力項目、承認手順などが分かりにくいと、利用者は操作の途中で離脱します。特に、初回設定や複数の画面をまたぐ作業に手間がかかるSaaSでは、利用開始後に使用頻度が下がることがあります。
「ログインはしているが、登録や申請が完了していない」場合は、操作上のつまずきがないかを確認してください。
既存の業務フローと合っていない
SaaSの機能が優れていても、現場の業務手順と合わなければ利用率は下がります。SaaSへの入力と、Excelや紙、別のシステムへの入力が重複している場合は、利用者に二重作業が発生します。
また、SaaSを使うために承認者や担当者の役割を大きく変える必要があると、導入直後は使われても、時間がたつにつれて従来の方法へ戻ることがあります。
入力や更新の負担が大きい
入力項目が多い、同じ情報を何度も入力する、スマートフォンでは操作しにくいなど、日々の作業負担が大きいことも原因です。利用者が「入力しても自分の仕事が楽にならない」と感じると、必要最低限の利用にとどまりやすくなります。
利用率の低下が特定の機能や部署に集中している場合は、その機能の入力時間や操作回数を比較すると、負担の大きい部分を見つけやすくなります。
利用者への教育やサポートが不足している
導入時に説明会を実施しても、すべての利用者が使い方を理解できるとは限りません。人事異動や中途入社で新しい利用者が増えた後に、研修やマニュアルが用意されていないと、利用率が下がることがあります。
マニュアルがあっても、実際の業務に沿った説明になっていなければ、利用者は解決方法を見つけられません。よく使う操作を短い手順で示し、困ったときの問い合わせ先を明確にすることが重要です。
管理者や上司が利用を促していない
業務上必要なSaaSであっても、上司や管理者が利用状況を確認せず、従来の方法でも問題がない状態になると、利用の優先度は下がります。
ただし、単に利用を強制するだけでは、不要な入力や形だけの利用につながるおそれがあります。利用状況を確認する際は、利用者を責めるのではなく、使いにくい工程や不要なルールを見直すことが大切です。
必要な情報や機能が不足している
利用者が必要とするデータがSaaSに登録されていない、検索しにくい、他のシステムと連携できないといった問題も、利用率低下につながります。
たとえば、SaaS上で情報を確認したくても、最新情報が反映されていなければ、利用者は別の資料やシステムを使います。この場合、利用者の意識だけでなく、データ登録の担当者や更新ルールも確認する必要があります。
権限やアカウントに問題がある
ログインできない、必要な画面を開けない、閲覧や編集の権限が不足しているなど、アカウントや権限設定の問題でも利用率は低下します。
特定の部署、役職、入社時期の利用者だけが使えていない場合は、全体的な操作性よりも、アカウント発行や権限設定を優先して調べるとよいでしょう。
サービスの速度や安定性に不満がある
画面の表示が遅い、エラーが多い、障害で使えない時間がある場合、利用者は業務を止めないために別の手段へ移ります。一度代替手段が定着すると、サービスが復旧しても利用率が戻らないことがあります。
利用率の変化と、障害、通信環境の変更、端末変更などの時期を照らし合わせると、関連を確認しやすくなります。
担当者や利用対象者が変わった
異動、退職、組織変更、業務委託先の変更などにより、SaaSを使う人や使い方が変わることがあります。契約ユーザー数は変わっていなくても、実際にその業務を担当する人が減れば、利用率も低下します。
この場合は、単純に利用率を元に戻すのではなく、現在の業務に必要なユーザー数や利用機能を見直す必要があります。
利用率低下の原因を特定する確認方法
原因を確認するときは、全体の利用率だけで判断せず、利用者、機能、期間、業務工程に分けて調べます。
- 利用率の定義を確認する。ログイン率、アクティブユーザー率、登録件数、主要機能の利用率など、何を利用率として集計しているかを明確にします。
- 低下した時期を特定する。利用率がいつから下がったのかを確認し、組織変更、システム変更、障害、ルール変更などの出来事と照らし合わせます。
- 利用者別に比較する。部署、役職、拠点、入社時期、端末などで分け、特定の利用者だけに問題が集中していないか確認します。
- 機能別に確認する。ログイン後にどの機能まで使われているかを確認し、利用が止まる画面や作業を特定します。
- 業務フローを確認する。SaaSへの入力が重複していないか、入力後に誰が何のために使うのかを確認します。
- 利用者から具体的に聞く。「使っていますか」と聞くだけでなく、「どの作業に時間がかかるか」「使わないときは何を使うか」「必要な情報が見つかるか」を確認します。
原因ごとの改善策
| 考えられる原因 | 確認すること | 改善の方向性 |
|---|---|---|
| 導入目的が不明確 | 利用者が目的や利用後の効果を説明できるか | 対象業務、利用目的、達成したい状態を共有する |
| 操作が難しい | どの画面や手順で操作が止まるか | 手順を簡略化し、実際の業務に沿った説明を用意する |
| 入力負担が大きい | 入力項目数、入力時間、二重入力の有無 | 不要な項目を減らし、連携や入力ルールを見直す |
| 教育や支援が不足 | 新任者向け研修、マニュアル、問い合わせ先の有無 | 短い操作手順やFAQを整備し、継続的に支援する |
| 権限やアカウントの問題 | ログイン可否、閲覧権限、編集権限、アカウント発行状況 | 権限の設計と発行・削除の手続きを見直す |
| 情報や機能が不足 | 必要なデータの登録状況、更新頻度、検索性 | データ登録の担当者と更新ルールを明確にする |
| 動作や安定性への不満 | 表示速度、エラー、障害発生時期 | 環境を切り分け、必要に応じて提供元へ問い合わせる |
利用率を確認するときの注意点
利用率が低下したからといって、必ずしもSaaSが使われていない、または導入が失敗したとは限りません。業務の繁忙期が終わった、対象業務が減った、利用者数の定義が変わったなど、必要な利用量そのものが変化している可能性もあります。
反対に、ログイン率が高くても、重要な登録や申請が完了していなければ、実際の業務では十分に活用されていないことがあります。ログイン数だけでなく、SaaS導入の目的に合った指標を確認してください。
たとえば、情報共有が目的なら閲覧者数だけでなく、必要な情報が期限内に更新されているかを確認します。申請業務が目的なら、ログイン数よりも申請の完了率や処理時間を確認するほうが適切な場合があります。
まとめ
SaaSの利用率が低下する原因は、導入目的の共有不足、操作や入力の負担、既存業務との不一致、教育不足、権限やシステムの問題などです。
最初に、利用率の定義と低下した時期を確認し、利用者別・機能別に利用状況を分けて調べてください。そのうえで、利用者がどの作業で困っているのかを確認すると、単なる利用促進ではなく、原因に合った改善につなげられます。







