SaaSの予算管理では、サービスごとの契約額を並べるだけでなく、契約情報・利用状況・更新日・部門別の負担額を一つにまとめて管理します。まず現状の契約を一覧化し、利用実態と今後の必要性を確認したうえで、契約・更新・解約のルールを決めることが基本です。
SaaSの予算管理で最初に行うこと
最初に、会社で契約しているSaaSを漏れなく把握します。情報システム部門や経理部門が把握している契約だけでなく、各部署が個別に契約したサービスも対象にすることが重要です。
次の項目を表にまとめると、予算の全体像を確認しやすくなります。
| 管理項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| サービス名 | 契約しているSaaSの名称 |
| 利用部門 | どの部署が利用しているか |
| 契約プラン | 料金プラン、利用可能な機能、ユーザー数 |
| 契約期間 | 月額、年額、契約開始日、契約終了日 |
| 料金 | 月額または年額、初期費用、追加料金 |
| 更新日 | 自動更新の有無と更新予定日 |
| 契約担当者 | 社内の責任者とサービス側の窓口 |
| 利用状況 | 契約席数、実際の利用者数、利用頻度 |
契約書、請求書、法人カードの明細、経費精算記録、メールの契約通知などを照合すると、登録漏れを見つけやすくなります。
SaaSの年間予算を計算する方法
年間予算は、サービスごとの年間料金に、追加料金や利用量に応じた費用を加えて計算します。月額料金だけでなく、年払い契約、初期費用、超過料金、オプション料金も確認してください。
基本的な計算式は次のとおりです。
年間SaaS費用 = 月額固定費×12カ月 + 年額料金 + 初期費用・追加費用・従量料金
たとえば、月額5万円のサービスを1年間利用し、追加料金が年間10万円かかる場合は、次の計算になります。
5万円×12カ月+10万円=70万円
これは計算例であり、実際の予算には契約期間や料金改定、利用量の変動を反映させる必要があります。料金がドルなど外貨で請求される場合は、為替変動によって円換算額が変わる点にも注意が必要です。
予算と実績を月ごとに比較する
予算を立てた後は、予算額と実際の支出を毎月比較します。年払いの契約は請求月だけ支出が大きく見えるため、管理方法をあらかじめ統一しておくことが大切です。
管理方法には、主に次の2つがあります。
| 方法 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 支払月で管理する | 請求や支払いが発生した月に費用を記録する | キャッシュの流れを確認したい場合 |
| 利用月に分けて管理する | 年額料金を利用期間に分けて記録する | 月ごとの利用コストを比較したい場合 |
予算と実績の差が大きい場合は、料金の変動だけでなく、次の原因も確認します。
- 新しいサービスを予算に含めていなかった
- 利用者やライセンス数が増えた
- 上位プランや追加オプションに変更した
- 無料期間終了後に課金が始まった
- 解約したつもりのサービスが継続していた
- 為替や従量課金によって請求額が変わった
利用状況を見て不要な契約を減らす
SaaSの予算を抑えるには、単純に安いサービスへ変更するより、まず使われていない契約や重複契約を確認します。契約数、実際の利用者数、ログイン頻度、主要機能の利用状況をサービスごとに確認しましょう。
判断するときは、次のように分類すると整理しやすくなります。
- 継続:業務に必要で、利用状況も十分にある
- 縮小:利用者が少なく、ライセンス数やプランを減らせる
- 統合:複数のサービスが似た機能を持っている
- 解約候補:利用実績がなく、代替手段もある
- 要確認:利用が少ないが、特定の業務に必要な可能性がある
利用が少ないからといって、すぐに解約できるとは限りません。監査、法令対応、データ保存、緊急時の利用など、通常時の利用回数だけでは判断できない目的がないかを契約担当者に確認します。
契約更新日を基準に見直す
SaaSの予算管理では、更新日を把握しておくことが重要です。自動更新の契約は、更新日を過ぎると一定期間の料金が発生する場合があるため、契約条件を確認したうえで、社内の見直し期限を設定します。
たとえば、次のような期限を決めます。
- 更新日の2〜3カ月前に、利用部門へ継続意向を確認する
- 利用者数、利用頻度、必要な機能を確認する
- 継続、プラン変更、解約の案を比較する
- 承認を受け、必要な手続きを行う
- 契約変更後の請求額と利用権限を確認する
解約通知の期限や違約金の有無はサービスごとに異なります。更新日だけでなく、解約申請の締切、最低契約期間、返金条件も契約書や利用規約で確認してください。
SaaSの予算管理ルールを決める
個別契約を見直すだけでは、SaaSの増加を防ぎにくいため、社内で契約ルールを決めます。特に、誰が申請し、誰が承認し、どの部署が費用を負担するかを明確にします。
最低限、次のルールを決めておくと管理しやすくなります。
- 新しいSaaSを契約する前に申請する
- 既存サービスで代替できないかを確認する
- 費用だけでなく、利用目的と対象者を記載する
- 一定額以上の契約には追加承認を設定する
- 年額契約や自動更新契約は、更新前に再確認する
- 退職者や異動者のアカウントを停止する
- 契約担当者が変わった場合は台帳を更新する
- 四半期や半期など、決めた頻度で利用状況を確認する
費用負担の方法は、利用部門が直接負担する方法と、会社全体で負担する方法があります。利用部門負担はコスト意識を持ちやすく、全社負担は共通基盤を導入しやすいなど、それぞれに特徴があります。サービスの性質に応じて使い分けてください。
SaaS予算を管理する表の作り方
最初はスプレッドシートでも、必要な項目を統一すれば管理できます。次の列を用意すると、予算、利用状況、更新判断をまとめて確認できます。
- サービス名
- 契約部門
- 利用目的
- 契約プラン
- 契約席数
- 実利用者数
- 月額料金
- 年額料金
- 追加・従量料金
- 年間予算
- 年間実績
- 契約開始日
- 更新日
- 解約通知期限
- 自動更新の有無
- 契約担当者
- 継続・縮小・解約の判断
- 次回確認日
年間予算と年間実績の差は、次の式で確認できます。
予算差異 = 年間実績 − 年間予算
実績が予算を上回った場合は、利用者数、プラン、追加機能、従量料金のどれが原因かを分けて確認します。差額だけを見て削減すると、必要なサービスまで対象にしてしまう可能性があります。
専用ツールを使うか判断する
契約数が少なく、担当者が一覧を定期的に更新できる場合は、スプレッドシートで始められます。一方、契約数が多い、部署ごとの契約が分散している、更新漏れやアカウント管理の確認に手間がかかる場合は、SaaS管理やIT資産管理の専用ツールを検討します。
ツールを選ぶときは、機能の多さだけでなく、次の点を確認します。
- 契約情報と請求情報を一元管理できるか
- 更新日や解約期限を通知できるか
- 利用状況やライセンス数を確認できるか
- 部門別やサービス別に費用を集計できるか
- 権限管理や退職者対応に使えるか
- 導入費用と運用担当者の負担が見合うか
ツールを導入しても、契約情報の登録や利用部門による確認が行われなければ、予算管理は機能しません。ツールの導入前に、誰がどの情報をいつ更新するかを決めておく必要があります。
SaaSの予算管理を始める手順
迷った場合は、次の順番で進めると、契約の把握から見直しまでを段階的に行えます。
- 請求書、カード明細、経費精算、契約書からSaaSを洗い出す
- サービス名、料金、契約期間、更新日、担当部署を台帳に登録する
- 契約席数と実際の利用者数を照合する
- 重複サービス、未使用アカウント、不要なオプションを確認する
- サービスごとの年間費用と部門別予算を計算する
- 更新前に継続、縮小、統合、解約を判断する
- 月次で予算と実績を比較し、差異の原因を記録する
- 四半期や半期ごとに台帳とルールを見直す
SaaSの予算管理で最初に行うべきことは、契約の一覧化です。そのうえで、利用実態と更新条件を確認し、サービスごとの年間費用、部門別の負担、更新時の判断を一つの管理表にまとめます。支出額だけでなく、必要性と利用状況を基準に見直すことが、継続的な予算管理につながります。







