SaaSの解約理由を分析するには、解約時のアンケートだけで判断せず、顧客データ・利用状況・問い合わせ履歴・顧客の声を組み合わせて、解約に至る共通条件を特定することが重要です。
基本的な流れは、「解約理由を分類する」「顧客を条件別に分ける」「解約前の行動を見る」「原因を検証する」「改善施策の効果を測る」の5段階です。理由を集計するだけでなく、どの顧客が、いつ、どのような利用状況で解約したのかまで確認します。
SaaSの解約理由を分析する基本手順
まずは、解約に関する情報を同じ形式で集め、分類と比較ができる状態にします。次の順番で進めると、単なる印象ではなく、改善につながる分析をしやすくなります。
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分析する解約の範囲を決める
月次解約を対象にするのか、年間契約の更新失敗を対象にするのかを決めます。契約期間、解約日、対象プラン、無料トライアルからの離脱を含めるかどうかも最初に定義します。
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解約理由を分類する
アンケートの自由記述や営業担当者のメモを、比較できるカテゴリに整理します。分類例は「料金」「機能不足」「使いにくさ」「導入支援不足」「利用頻度の低下」「他社サービスへの乗り換え」「事業や予算の変化」などです。
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顧客を条件別に分ける
全顧客を一括で集計せず、契約期間、料金プラン、業種、企業規模、利用人数、導入経路、利用目的などで分けます。同じ「料金」という理由でも、小規模企業と大企業では背景が異なる可能性があります。
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解約前の利用状況を確認する
ログイン回数、主要機能の利用回数、登録ユーザー数、データ作成数、連携機能の利用状況、問い合わせ件数などを、解約前の期間と継続顧客で比較します。
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仮説を顧客の声で確認する
データから「利用が定着していない顧客は解約しやすい」と考えた場合、解約顧客へのインタビューや問い合わせ履歴を確認します。数字だけで原因を断定せず、顧客がなぜその行動を取ったのかを確かめます。
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改善施策を実施し、解約率の変化を測る
オンボーディングの改善、料金プランの見直し、機能説明の追加などを行ったら、対象顧客と実施期間を記録します。その後、解約率や利用状況がどう変化したかを、施策前と比較します。
最初に整理するべき解約理由のデータ
解約理由の分析では、顧客が申告した理由と、実際の利用状況を分けて整理します。申告理由は顧客の認識を知るために役立ち、利用データは解約前の兆候を確認するために役立ちます。
| データ | 分かること |
|---|---|
| 解約理由アンケート | 顧客が解約の決め手と考えていること |
| 解約時の自由記述 | 選択式では把握しにくい具体的な不満や事情 |
| 契約情報 | プラン、契約期間、契約金額、更新時期など |
| プロダクト利用ログ | 利用頻度、主要機能の利用状況、利用者数の変化 |
| 問い合わせ・サポート履歴 | つまずいた箇所、未解決の問題、対応までの経緯 |
| 営業・カスタマーサクセスの記録 | 導入目的、運用上の課題、社内の意思決定状況 |
特に注意したいのは、「予算の都合」「使わなくなった」といった大まかな回答です。可能であれば、「予算が削減された」「利用効果を説明できなかった」「導入担当者が異動した」など、背景を追加で確認します。
解約理由を分類する方法
分類は、最初から細かくしすぎず、経営やプロダクト改善に使える粒度にします。次のような大分類を作り、必要に応じて小分類を追加すると整理しやすくなります。
- 価格・契約:料金が高い、予算削減、契約条件が合わない
- 機能:必要な機能がない、機能が多すぎる、他社製品で代替できる
- 使いやすさ:操作が難しい、設定に時間がかかる、画面が分かりにくい
- 導入・定着:社内で使われない、教育が進まない、導入目的が共有されていない
- サポート:回答が遅い、解決できない、必要な支援を受けられない
- 効果・適合性:期待した成果が出ない、自社の業務に合わない
- 顧客側の事情:事業縮小、担当者変更、組織変更、利用プロジェクトの終了
- 競合・内製化:他社サービスへの移行、自社開発、既存ツールへの統合
1件の解約に複数の理由がある場合は、主な理由を1つに決めるだけでなく、副次的な理由も記録します。例えば「料金が高い」が表面的な理由でも、実際には利用頻度が低く、費用に見合う効果を感じられなかった可能性があります。
解約率と解約理由の割合を計算する
解約の規模を確認するには、解約率と理由別の件数・割合を分けて見ます。基本的な計算式は次のとおりです。
- 顧客解約率 = 対象期間中の解約顧客数 ÷ 期間開始時点の顧客数
- 理由別割合 = 特定の理由で解約した顧客数 ÷ 対象期間中の解約顧客数
例えば、仮に対象期間中の解約顧客が50社で、そのうち10社が「利用効果を感じられない」と回答した場合、理由別割合は「10社 ÷ 50社 = 20%」です。これは解約全体に占める回答割合であり、全顧客の20%が解約するという意味ではありません。
また、月額プランと年額プランでは解約が発生するタイミングが異なります。プランを混ぜて集計すると傾向を見誤ることがあるため、契約形態や更新時期を分けて確認します。
解約顧客と継続顧客を比較する
解約顧客だけを見ると、解約に共通する特徴なのか、全顧客にも見られる特徴なのかを判断できません。可能であれば、同じ契約期間やプランの継続顧客と比較します。
| 比較項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 利用頻度 | 解約前のログイン回数や主要機能の利用回数に差があるか |
| 初期設定 | 導入直後に必要な設定を完了しているか |
| 利用者数 | 登録だけでなく、実際に利用するユーザーがいるか |
| 主要機能の利用 | 契約目的に関わる機能を使っているか |
| サポート利用 | 問い合わせの内容や未解決の問題があるか |
| 契約・顧客属性 | プラン、業種、企業規模、導入経路などに偏りがあるか |
例えば、解約顧客に「ログインが少ない」という傾向があっても、ログイン回数の少なさが直接の原因とは限りません。必要な作業が完了して利用しなくなったケースもあるため、主要機能の利用や導入目的の達成状況と合わせて判断します。
解約前の兆候を分析する
解約理由の分析は、解約後の振り返りだけでなく、解約前の兆候を見つけるためにも行います。特定の行動が解約顧客に多い場合、解約リスクを早めに把握できる可能性があります。
確認する期間は、解約直前だけに限定しないことが大切です。例えば、解約前7日、30日、90日など複数の期間で利用状況を比較すると、短期的な変化と長期的な停滞を分けて見られます。
- ログインや主要機能の利用が継続的に減っている
- 導入後に初期設定やデータ登録が進んでいない
- 利用ユーザーが増えず、担当者だけが操作している
- エラーや問い合わせが繰り返されている
- 契約更新前に管理者の利用が止まっている
- 導入時に設定した目的や成果指標が確認されていない
ただし、これらは一般的な確認項目であり、すべてのSaaSに共通する解約サインとは限りません。自社の継続顧客と解約顧客のデータを比較して、実際に関連があるかを確認します。
定量データと定性データを組み合わせる
定量データは「どの程度起きているか」を示し、定性データは「なぜ起きたか」を理解するために使います。どちらか一方だけでは、解約の背景を十分に説明できないことがあります。
定量データで見る内容
- 解約顧客数と解約率
- 理由別の件数と割合
- プラン別・業種別・導入経路別の解約率
- 契約期間別の解約率
- 解約前の利用頻度や主要機能の利用状況
定性データで見る内容
- 解約アンケートの自由記述
- 解約時の面談やインタビュー
- 問い合わせの内容と対応履歴
- 営業・カスタマーサクセス担当者の記録
- 導入時に顧客が期待していた成果
例えば、「機能不足」という回答が多い場合でも、顧客が本当に必要としている機能が未提供なのか、既存機能を知らないだけなのかで対策は変わります。問い合わせ履歴やインタビューを確認し、理由の意味を具体化します。
解約理由から改善施策につなげる
解約理由を集計しただけでは、分析の目的を達成できません。理由ごとに、原因を検証する方法と担当する部門を決めて、改善施策につなげます。
| 解約理由の例 | 確認すること | 施策の例 |
|---|---|---|
| 使い始められない | 初期設定や導入手順で止まっていないか | 初期設定ガイド、導入支援、チュートリアルの改善 |
| 機能が分かりにくい | 目的の機能を認識・利用できているか | 画面説明、ヘルプ、利用例、検索性の改善 |
| 期待した効果が出ない | 導入目的と利用方法が一致しているか | 導入時の目標設定、活用支援、成果確認の実施 |
| 料金に見合わない | 利用量、成果、契約プランとの不一致がないか | プラン設計や料金説明の見直し |
| サポートに不満がある | 問い合わせの解決時間や未解決内容に問題がないか | 回答手順、FAQ、対応体制の改善 |
| 社内で定着しない | 利用者への教育や管理者の運用が行われているか | 社内展開用資料、権限設定、利用状況の通知 |
複数の理由がある場合は、発生件数だけでなく、改善可能性や事業への影響も見て優先順位を付けます。件数が少なくても、高額契約の解約や、同じ原因が他の顧客にも広がる問題は優先すべき場合があります。
解約理由を正しく集めるアンケートの作り方
解約理由を収集する際は、選択式と自由記述を組み合わせます。選択式だけでは集計しやすい一方で、顧客が本当に伝えたい背景を取りこぼすことがあります。
質問例は次のとおりです。
- 今回、解約を決めた主な理由は何ですか
- 解約を決める前に、どのような問題がありましたか
- その問題について、問い合わせや相談をしましたか
- 期待していた成果は得られましたか
- サービスを継続するために、改善してほしい点は何ですか
- 他のサービスや方法へ移行する場合、その理由は何ですか
「料金が高い」「使わなくなった」のような選択肢だけで終わらせず、必要に応じて追加質問を表示します。例えば「使わなくなった」を選んだ顧客に、「業務がなくなった」「社内で定着しなかった」「操作が難しかった」などの背景を尋ねます。
分析で起こりやすい失敗
回答された理由をそのまま原因と断定する
解約時の回答は、顧客が最後に強く感じていた不満を示している可能性があります。しかし、それが最初の原因や唯一の原因とは限りません。契約履歴や利用状況と照合し、原因と結果を混同しないようにします。
すべての顧客を同じ条件で集計する
無料トライアルの離脱と、長期契約顧客の更新解約では、理由も改善策も異なる場合があります。契約段階や顧客属性を分けずに集計すると、重要な傾向が隠れることがあります。
少数の意見だけで大きな改善を決める
1件の意見が重要な問題を示すことはありますが、全体傾向とは限りません。件数、契約金額、顧客属性、利用データを合わせて確認し、必要なら追加調査を行います。
施策後の評価指標を決めていない
機能追加やサポート改善を行う前に、何をもって改善とするかを決めます。解約率だけでなく、初期設定完了率、主要機能の利用率、問い合わせの未解決件数、更新率など、施策に合う指標を設定します。
解約理由の分析で最初に行うこと
最初に、直近の解約顧客を対象に、解約理由・契約情報・解約前の利用状況・問い合わせ履歴を同じ表にまとめます。そのうえで、継続顧客との違いをプランや契約期間ごとに比較します。
分析の結論は、「料金が高い」といった一言で終わらせず、「どの顧客が、どの時期に、どの利用上の問題を抱え、その結果として何を理由に解約したのか」まで具体化します。こうして初めて、プロダクト改善、導入支援、サポート、料金設計のどこに対策が必要かを判断できます。







