SaaSのチャーン分析でコホート分析を行う方法とは?

SaaSのチャーン分析でコホート分析を行う方法とは?

SaaSのチャーン分析でコホート分析を行うには、顧客を「契約開始月」などでグループ分けし、各コホートが契約後の月数ごとにどれだけ継続しているかを比較します。全顧客の平均チャーン率だけでは分かりにくい、解約が起きる時期や改善施策の効果を把握できる方法です。

分析では、まずコホートの基準とチャーンの定義を決め、顧客数または売上を月次で追跡します。そのうえで、コホート別の継続率・チャーン率を表やヒートマップにすると、SaaSの解約傾向を比較しやすくなります。

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コホート分析とは

コホート分析とは、共通する条件を持つ顧客をグループに分け、時間の経過にともなう行動の変化を追う分析方法です。

SaaSのチャーン分析では、代表的なコホートとして「初回契約月」が使われます。たとえば、2026年1月に契約した顧客を1月コホート、2026年2月に契約した顧客を2月コホートとして、契約後1か月目、2か月目以降の継続状況を比較します。

全顧客をまとめて分析する方法では、新規契約が増えた影響と、既存顧客の解約増加を分けにくいことがあります。コホート分析なら、契約時期が異なる顧客を分けて確認できるため、顧客の定着状況をより具体的に把握できます。

SaaSのチャーン分析で使う主な指標

コホート分析では、顧客数を基準にするか、売上を基準にするかによって見る指標が変わります。目的に応じて、ロゴチャーンと収益チャーンを使い分けます。

指標 何を測るか 主な用途
ロゴチャーン率 解約した顧客数の割合 顧客の継続・解約状況を見る
収益チャーン率 減少した継続収益の割合 売上への影響を見る
顧客継続率 残っている顧客の割合 コホートの定着状況を見る
売上継続率 残っている継続収益の割合 顧客単価の変化も含めて見る

顧客数を使うロゴチャーン率

ロゴチャーン率は、一定期間の開始時点にいた顧客のうち、解約した顧客の割合です。

ロゴチャーン率 = 期間中に解約した顧客数 ÷ 期間開始時点の顧客数 × 100

たとえば、あるコホートの開始時点の顧客数が100社で、契約後2か月目までに8社が解約した場合、2か月目までの累積ロゴチャーン率は8%です。

顧客継続率

顧客継続率は、コホートの開始時点から残っている顧客の割合です。

顧客継続率 = 対象時点で継続している顧客数 ÷ コホート開始時点の顧客数 × 100

ロゴチャーン率を累積値として計算する場合、顧客継続率は「100%−累積ロゴチャーン率」で求められます。ただし、対象期間中の再契約や顧客数の定義が異なる場合は、集計ルールを統一する必要があります。

売上を使う収益チャーン率

収益チャーン率は、顧客数ではなく、MRRなどの継続収益を基準にして計算します。MRRは、月次の継続収益を表す指標です。

収益チャーン率 = 期間中に失われたMRR ÷ 期間開始時点のMRR × 100

顧客数が減っていなくても、低価格プランへの変更や一部解約によってMRRが減ることがあります。そのため、売上への影響を確認したい場合は、顧客数だけでなく収益チャーンも確認します。

コホート分析を行う手順

分析を始める前に、対象期間、コホートの分け方、チャーンの定義を決めます。定義が途中で変わると、月ごとの比較が正しくできなくなるためです。

  1. 分析の目的を決める
    「契約後の早期解約を減らしたい」「料金プラン変更による売上減少を把握したい」など、最初に確認したい課題を決めます。顧客数の改善が目的ならロゴチャーン、売上の改善が目的なら収益チャーンを中心にします。

  2. コホートの基準を決める
    一般的には初回契約月を基準にします。必要に応じて、料金プラン、流入経路、業種、企業規模、導入機能などで分けることもできます。ただし、細かく分けすぎると1グループの顧客数が少なくなり、傾向を判断しにくくなります。

  3. チャーンの定義を決める
    完全解約だけをチャーンとするのか、一時停止、未払いによる停止、ダウングレードも含めるのかを決めます。契約終了日と利用停止日が異なるサービスでは、どちらを基準にするかも統一します。

  4. 顧客データを月単位などで集計する
    顧客ID、契約開始日、解約日、プラン、月次売上などを使い、各コホートの開始時点の顧客数と、各月に継続している顧客数を集計します。

  5. 契約後の経過月数にそろえる
    実際の暦月ではなく、「契約後0か月目」「契約後1か月目」「契約後2か月目」のように、契約開始からの経過月数で並べます。これにより、契約時期が異なるコホートを同じ条件で比較できます。

  6. 継続率またはチャーン率を計算する
    各コホートの開始時点を100%として、経過月ごとの継続率を計算します。必要に応じて、顧客数とMRRの両方で同じ集計を行います。

  7. コホート間の差を確認する
    契約後1か月目だけ急激に継続率が下がるのか、数か月後から解約が増えるのかを比較します。特定のプランや流入経路だけに差がある場合は、さらに条件別に分けて原因を調べます。

コホート表の作り方

コホート表では、行に契約開始月、列に契約後の経過月数を置きます。各セルには、その時点の継続率またはチャーン率を入れます。

契約開始コホート 開始時点 契約後1か月目 契約後2か月目 契約後3か月目
1月コホート 100% 92% 88% 84%
2月コホート 100% 95% 91% 未集計
3月コホート 100% 93% 未集計 未集計

上の表は計算方法を示すための仮定例です。1月コホートの契約後2か月目の継続率が88%なら、開始時点の顧客の88%がその時点で継続していることを表します。

新しいコホートほど観測できる期間が短いため、未集計のセルを0%として扱ってはいけません。契約後3か月目をまだ迎えていないコホートは、単にデータがそろっていない状態です。

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コホート分析でチャーンの原因を読み取る方法

契約後の早い時期に継続率が下がる場合

契約後1〜2か月目に継続率が大きく下がる場合、導入時の設定、初期トレーニング、利用開始までの流れに課題がある可能性があります。

これはコホート表から直接原因が確定するわけではありません。解約理由、ログイン状況、主要機能の利用状況、問い合わせ履歴などを組み合わせて、初期段階でつまずいた顧客が多いかを確認します。

数か月後から継続率が下がる場合

契約直後は継続しているものの、数か月後に解約が増える場合は、利用価値を実感できるまでの期間、契約更新時期、機能不足、料金への不満などを確認します。

契約期間が年単位の場合は、月次の利用停止だけでなく、更新月の解約率を見る必要があります。月次契約と年次契約を同じ基準で比較すると、解約が発生するタイミングを誤って解釈することがあります。

特定のコホートだけ継続率が低い場合

特定の契約開始月だけ継続率が低い場合、サービスの変更、価格改定、営業施策、導入支援の体制変更など、その時期に起きた出来事と照合します。

ただし、1つのコホートだけで原因を断定することはできません。複数のコホートで同じ傾向が再現するか、顧客属性や契約プランに共通点があるかを確認してください。

顧客数は維持されているのにMRRが下がる場合

顧客数ベースの継続率が高い一方でMRRが下がる場合、低価格プランへの変更、席数の減少、一部機能の解約などが起きている可能性があります。

この場合、ロゴチャーンだけでは売上への影響を把握できません。顧客数、MRR、プラン変更、追加購入を分けて集計し、収益の増減を確認します。

コホート分析で注意したいポイント

新規顧客と既存顧客を混ぜない

月次の全体チャーン率だけを見ると、新規顧客の増加によって継続率が変わって見えることがあります。新規契約のコホートと、すでに利用している既存顧客を分けて分析すると、初期解約と長期利用後の解約を区別できます。

分母を統一する

チャーン率の計算では、期間開始時点の顧客数を分母にするのか、期間中の平均顧客数を使うのかを統一します。コホート間で分母が異なると、数値の比較が難しくなります。

解約とダウングレードを分ける

顧客が完全に契約を終了するチャーンと、プランを下げるダウングレードは、事業への影響が異なります。顧客数の分析では同じに見えても、MRRの分析では別の項目として記録したほうが、売上減少の原因を把握しやすくなります。

観測期間の違いを考慮する

契約開始時期が新しいコホートは、長期間の継続状況をまだ観測できません。古いコホートと新しいコホートを、同じ契約後経過月数で比較することが重要です。

一時的な停止を解約と扱うか決める

休会や一時停止があるサービスでは、停止した時点でチャーンとするのか、一定期間後に復帰しなかった場合にチャーンとするのかを決めます。定義を決めずに集計すると、担当者や期間によって数値が変わるおそれがあります。

コホート分析の結果を改善施策につなげる方法

分析結果を見たら、継続率が下がる時期と、影響を受けている顧客の条件を組み合わせて施策を決めます。

  • 契約後1か月目に解約が多い場合:初期設定、オンボーディング、導入支援の見直し
  • 特定機能を使わない顧客の解約が多い場合:利用開始の案内、操作説明、機能の導入支援
  • 特定プランの解約が多い場合:料金、機能構成、契約条件、対象顧客との適合性の確認
  • 更新月に解約が集中する場合:更新前の利用状況確認、成果の共有、契約更新時の案内
  • 顧客数よりMRRの減少が大きい場合:ダウングレード、席数減少、追加購入の状況確認

施策を実施した後は、施策前後のコホートで同じ指標を比較します。ただし、コホート分析だけでは施策が原因で改善したと断定できないため、対象顧客、実施時期、他の変更点も記録しておくことが大切です。

まとめ

SaaSのチャーン分析でコホート分析を行うときは、顧客を契約開始月などで分け、契約後の経過月数ごとに継続率やチャーン率を比較します。

最初に、コホートの基準、チャーンの定義、顧客数とMRRのどちらを分析するかを決めてください。そのうえで、コホート表から「いつ」「どの顧客層で」「顧客数または売上がどれだけ減っているか」を確認し、解約理由や利用状況と組み合わせて改善施策につなげます。

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