SaaSの顧客獲得単価(CAC)の計算方法は?

SaaSの顧客獲得単価(CAC)の計算方法は?

SaaSの顧客獲得単価(CAC)は、一定期間に営業・マーケティングへ使った費用を、その期間に獲得した新規顧客数で割って計算します。基本式は「CAC=顧客獲得にかかった費用の合計÷新規顧客数」です。広告費だけでなく、人件費や営業手数料などを含めるかによって数値が変わるため、集計範囲と期間をそろえることが重要です。

SaaSの顧客獲得単価(CAC)の計算式

CACの基本的な計算式は次のとおりです。

CAC = 顧客獲得費用の合計 ÷ 新規獲得顧客数

たとえば、1か月の営業・マーケティング費用が300万円で、その月に新規顧客を20社獲得した場合は、次のように計算します。

300万円 ÷ 20社 = 15万円

この場合のCACは、1社あたり15万円です。

CACに含める費用と新規顧客数

CACを正しく比較するには、分子に含める費用と、分母にする顧客数をあらかじめ決めておきます。

項目 計算に含める例 確認する点
広告・集客費 オンライン広告、展示会、コンテンツ制作費 認知目的など、顧客獲得に直接結び付かない費用を含めるか
営業人件費 営業担当者の給与、賞与、営業委託費 既存顧客対応の人件費を除くか、一定割合だけ配分するか
マーケティング人件費 マーケティング担当者の給与、外注費 採用やブランド活動などの費用を含めるか
営業関連費 販売手数料、交通費、商談ツール費用 営業活動に使ったシステム費用を含めるか

分母の「新規顧客数」には、通常、対象期間中に初めて契約した顧客を使います。契約更新や既存顧客の上位プランへの変更は、新規顧客の獲得ではないため、基本の新規顧客CACには含めません。

なお、顧客を「契約企業」で数えるか、「契約アカウント」や「有料契約単位」で数えるかは、SaaSの料金体系に合わせて統一してください。

計算期間は営業・契約のずれを考慮する

CACは、費用を使った月と契約が成立した月が一致しない場合に注意が必要です。広告や営業活動を始めてから契約まで数週間から数か月かかる場合、単純に同じ月の費用と契約数を割ると、月ごとの数値が大きく変動することがあります。

たとえば、1月に広告費を使い、2月と3月に契約が増える場合があります。このときは、次のような方法で集計条件を決めます。

  • 毎月の費用と新規顧客数を割り、3か月移動平均で見る
  • 四半期単位で営業・マーケティング費用と新規顧客数を集計する
  • 広告や営業の開始時期に合わせて、獲得までの期間を考慮する

どの方法が適切かは、商談から契約までの期間や顧客単価によって異なります。短期間で契約するSaaSは月次でも確認しやすい一方、契約まで時間がかかるSaaSは四半期や移動平均で見るほうが実態を把握しやすくなります。

全体のCACとチャネル別CACの違い

複数の集客経路を使っている場合は、全体のCACだけでなく、チャネル別のCACも計算できます。

チャネル別CAC = そのチャネルにかかった費用 ÷ そのチャネルから獲得した新規顧客数

仮に、検索広告に60万円を使って3社を獲得した場合、検索広告のCACは20万円です。一方、セミナーに40万円を使って4社を獲得した場合、セミナーのCACは10万円になります。

ただし、複数の広告を見た顧客や、広告を見た後に営業紹介で契約した顧客もいます。そのため、チャネル別に比較するときは、どの接点を成果として数えるかという「計測ルール」を統一する必要があります。

広告費だけで計算するときの注意点

広告費だけを新規顧客数で割った数値は、営業・マーケティング活動全体のCACとは異なります。これは広告経由の獲得コストや、広告費ベースのCPAに近い指標です。

たとえば、広告費が50万円、営業担当者の人件費が100万円、ツール費用が20万円で、新規顧客を10社獲得したとします。

  • 広告費だけで計算した場合:50万円÷10社=5万円
  • 関連費用をすべて含めた場合:170万円÷10社=17万円

広告の効率を確認したい場合は広告費だけの指標を使い、事業全体で顧客獲得の採算を判断したい場合は、営業・マーケティングにかかった費用を広く含めたCACを使います。両者を同じ「CAC」と呼ばないことが大切です。

CACを計算するときの実務手順

  1. 集計期間を決める
    月次、四半期など、営業サイクルに合う期間を設定します。
  2. 顧客獲得に関係する費用を集める
    広告費、営業・マーケティング人件費、販売手数料、外注費、営業ツール費などを集計します。
  3. 新規顧客の定義を決める
    初回契約だけを数えるのか、無料トライアルから有料化した顧客を含めるのかを決めます。
  4. 対象期間の新規顧客数を集計する
    分子の費用と同じ対象範囲で、契約が成立した顧客数を数えます。
  5. 費用を新規顧客数で割る
    「顧客獲得費用の合計÷新規顧客数」でCACを算出します。
  6. 前月やチャネル別の数値と比較する
    単月の上下だけで判断せず、契約までの期間や顧客単価も合わせて確認します。

CACの数値を判断するときのポイント

CACが低いほど効率がよいとは限りません。低価格のプランを契約した顧客と、高価格で長期間利用する顧客では、許容できるCACが異なるためです。

判断するときは、少なくとも次の項目を合わせて確認します。

  • 顧客が支払う月額または年額
  • 顧客の継続期間や解約率
  • 売上から原価を引いた粗利
  • 契約から売上回収までの期間
  • 顧客獲得経路ごとの契約品質

たとえば、CACが高くても、長期間利用する顧客や高単価プランの顧客を獲得できているなら、事業上許容できる場合があります。逆に、CACが低くても短期間で解約される場合は、獲得効率がよいとは判断できません。

計算前に決めておくべきルール

同じSaaSのCACを継続的に比較するには、次のルールを固定します。

  • 顧客を企業、契約、アカウントのどれで数えるか
  • 無料トライアルを新規顧客に含めるか
  • 既存顧客の追加契約を新規顧客から除外するか
  • 営業・マーケティング担当者の人件費を全額または一部含めるか
  • 契約までの期間を考慮して、月次または四半期で集計するか
  • チャネル別の成果をどの接点に割り当てるか

これらの条件が月ごとに変わると、CACの増減が施策の成果なのか、集計方法の変更なのか分からなくなります。計算式だけでなく、費用と顧客数の定義も記録してください。

SaaSの顧客獲得単価は、「顧客獲得に使った費用の合計÷同じ条件で集計した新規顧客数」で計算します。まずは集計期間、含める費用、新規顧客の定義を決め、そのうえで全体CACとチャネル別CACを分けて確認すると、顧客獲得の効率を比較しやすくなります。