SaaSマーケティング戦略とは?2023年に必要な考え方や施策を解説?

SaaSマーケティング戦略とは?2023年に必要な考え方や施策を解説?

SaaSマーケティング戦略とは、クラウド型のソフトウェアを継続的に利用してもらうために、見込み顧客の獲得から契約、利用定着、継続・追加契約までを設計する考え方です。

2023年は、広告でリードを集めるだけでなく、顧客がサービスの価値を理解し、使い続けられる仕組みまで考えることが重要でした。特に、対象顧客の明確化、顧客獲得単価と顧客生涯価値の管理、営業・カスタマーサクセスとの連携が戦略の軸になります。

SaaSマーケティング戦略で考えるべき範囲

SaaSでは、契約を獲得した時点がゴールではありません。利用開始後にサービスが使われ、契約が更新されることで、初めて長期的な売上につながります。

そのため、マーケティング施策は次の流れで設計します。

  1. 自社に合う顧客を定義する
  2. 認知を広げ、課題を持つ人を集める
  3. サービスへの関心を高める
  4. 商談や申し込みにつなげる
  5. 導入直後の利用を支援する
  6. 継続利用や追加契約につなげる

企業向けのSaaSでは、マーケティング、営業、カスタマーサクセスが別々に動くと、獲得した顧客が定着しない場合があります。マーケティングの成果をリード数だけで判断せず、商談化率、契約率、利用状況、解約率まで確認することが必要です。

2023年のSaaSマーケティングに必要な考え方

顧客獲得数よりも事業全体の収益を見る

リードや問い合わせを増やしても、契約につながらなかったり、短期間で解約されたりすれば、事業への貢献は限定的です。施策を評価するときは、集客数だけでなく、獲得にかかった費用と、その顧客が生み出す売上を比較します。

代表的な指標には、次のようなものがあります。

指標 意味 確認すること
CAC 1社または1人の顧客を獲得するためにかかった費用 広告費だけでなく、営業・マーケティング関連費用をどこまで含めるか
LTV 顧客が契約期間を通じて生み出す売上や利益 契約期間、月額料金、粗利、解約率
CVR 訪問者やリードが次の行動へ進んだ割合 問い合わせ、商談、申し込みなど、どの段階の転換率か
解約率 一定期間に契約を終了した顧客の割合 顧客数で見るか、売上で見るか
NRR 既存顧客の売上が更新や追加契約後にどれだけ残ったかを示す指標 解約・減額・追加契約を含めた既存顧客の変化

たとえば、問い合わせ数が増えていても、契約率が低ければターゲットや訴求に問題がある可能性があります。反対に契約率が高くても解約率が高い場合は、販売後の導入支援やサービス内容に課題があると考えられます。

誰にでも売ろうとせず、対象顧客を絞る

SaaSマーケティングでは、最初からすべての企業や個人を対象にするより、成果が出やすい顧客像を明確にする方が施策を設計しやすくなります。

対象顧客を決めるときは、次の項目を整理します。

  • 業種、企業規模、地域
  • 担当者の役職と意思決定の流れ
  • 現在どのような課題を抱えているか
  • 課題を解決するために使っている手段
  • 導入を決める条件と、導入を止める理由
  • 導入後に期待する成果

この顧客像は、一般にICPやペルソナとして整理します。ICPは自社サービスと特に相性のよい企業像、ペルソナは担当者の課題や行動を具体化した人物像です。

過去の契約企業を分析できる場合は、継続率が高い顧客、導入までの期間が短い顧客、利用機能が多い顧客に共通する条件を確認すると、対象顧客を定める手がかりになります。

契約前から利用後まで一貫した体験を設計する

SaaSでは、広告や営業資料で伝えた内容と、導入後に実際にできることが大きく異なると、期待値のずれが起こります。そのため、集客時の訴求、営業時の説明、契約後のオンボーディングを一貫させることが重要です。

特に、次の点を事前にそろえておく必要があります。

  • どの課題を解決するサービスなのか
  • 導入までに必要な準備は何か
  • 利用開始後、最初に達成してほしい状態は何か
  • 利用状況をどの指標で確認するか
  • 利用が止まった顧客にどう支援するか

2023年に検討したいSaaSマーケティング施策

検索流入を得るコンテンツマーケティング

見込み顧客が検索する課題や疑問に答える記事を公開し、サービスを知ってもらう方法です。サービスの機能紹介だけでなく、導入前に調べる情報、比較検討時に必要な情報、導入後の活用方法も対象になります。

記事を作るときは、キーワードを入れるだけでなく、読者がどの段階にいるかを分けます。

検討段階 検索・関心の例 適した内容
課題を認識する前後 業務改善の方法、作業の効率化 課題の整理、改善方法、失敗しやすい点
情報収集 ツールの選び方、必要な機能 選定基準、比較項目、導入手順
比較検討 サービス名、料金、他社との違い 機能、利用条件、料金体系、導入後の流れ

問い合わせを増やすことだけを目的にせず、記事を読んだ人が自社に合うサービスか判断できる情報を示すことが大切です。

ホワイトペーパーやウェビナーで見込み顧客を獲得する

課題のチェックリスト、導入手順、事例、調査結果などを資料として提供し、見込み顧客との接点を作ります。ウェビナーでは、サービスの説明だけでなく、参加者が抱える課題を解決する内容を中心にします。

資料のダウンロードやセミナー参加を、すぐに契約する意思表示と解釈してはいけません。取得した情報は、関心のあるテーマや検討時期などに応じて分類し、必要な情報を段階的に案内します。

無料トライアルやフリーミアムを活用する

無料トライアルは、顧客が契約前にサービスを試せる方法です。フリーミアムは、基本機能を無料で提供し、より高度な機能や利用量に応じて有料化する方法を指します。

これらを導入する場合は、無料登録者数だけで判断せず、次の指標を確認します。

  • 登録後に初回ログインした割合
  • 主要機能を利用した割合
  • 利用開始から価値を実感するまでの期間
  • 有料プランへ移行した割合
  • 無料期間終了後の継続状況

無料で試せること自体が成果になるわけではありません。顧客が価値を体験できる導線を用意し、必要に応じて使い方を案内することが必要です。

導入事例で利用後のイメージを伝える

導入事例では、企業名や導入結果だけでなく、導入前の課題、選定理由、導入時の工夫、利用後の変化を示します。読者が自社と似た条件か判断できるように、業種や規模、利用部門などを確認できる範囲で記載します。

数値を掲載する場合は、測定期間や比較対象を明らかにします。根拠を確認できない「大幅に改善した」「多くの企業が導入している」といった表現は避ける必要があります。

メールやマーケティングオートメーションで接点を保つ

一度資料をダウンロードした人が、すぐに契約するとは限りません。検討段階に応じて、導入の注意点、活用方法、事例などをメールで案内し、必要なタイミングで相談や商談につなげます。

ただし、同じ内容を一斉に送るのではなく、資料の種類、問い合わせ内容、利用状況などに応じて配信内容を分けます。配信停止の方法や個人情報の取り扱いなど、適用されるルールにも配慮が必要です。

プロダクト主導型成長(PLG)を検討する

PLG(Product-Led Growth)は、営業説明を起点にするのではなく、顧客が製品を実際に使う体験を通じて導入や拡大につなげる考え方です。無料トライアルやセルフサーブ型の申し込みと組み合わせるケースがあります。

PLGが向くかどうかは、次のような条件で判断します。

  • 顧客が短時間で価値を体験できる
  • 導入時に複雑な設定や個別開発が必要ない
  • 利用者が自分で申し込みや設定を進められる
  • 利用状況から継続や追加契約の兆候を把握できる

大規模な企業向けサービスなど、導入前の審査や複数部門の調整が必要な場合は、営業主導の支援を組み合わせた方が適していることがあります。PLGを導入すれば、必ず営業が不要になるわけではありません。

営業・カスタマーサクセスと連携する方法

SaaSマーケティングの成果を高めるには、部門ごとに異なる指標を追うのではなく、顧客の段階ごとに役割と引き継ぎ条件を決めます。

段階 主な担当 決めておくこと
認知・集客 マーケティング 対象顧客、訴求、流入経路
見込み顧客の育成 マーケティング・インサイドセールス 優先順位、連絡の条件、記録方法
商談・契約 営業 提案内容、失注理由、契約条件
導入・定着 カスタマーサクセス 初期設定、利用目標、支援方法
更新・拡大 カスタマーサクセス・営業 更新時期、利用状況、追加提案の条件

たとえば、マーケティングから営業へ引き渡す条件を「資料をダウンロードした人」とするのか、「料金ページを閲覧し、問い合わせをした人」とするのかで、営業が対応する顧客の質は変わります。条件は固定せず、契約率や営業からのフィードバックをもとに見直します。

SaaSマーケティング戦略を作る手順

施策を先に増やすのではなく、顧客と事業の条件を整理してから実行します。

  1. 事業目標を決める。新規契約数、売上、更新率など、期間と対象を含めて設定します。
  2. 対象顧客を定義する。業種、規模、担当者、課題、導入条件を整理します。
  3. 顧客の検討過程を整理する。課題認識、情報収集、比較、契約、導入、更新の各段階で必要な情報を確認します。
  4. 提供価値と訴求を決める。機能ではなく、どの顧客のどの課題をどう改善するのかを言語化します。
  5. 施策と導線を設計する。検索記事、広告、資料、ウェビナー、無料トライアルなどを顧客の段階に割り当てます。
  6. 部門間の引き継ぎ条件を決める。マーケティング、営業、カスタマーサクセスの役割と確認項目をそろえます。
  7. 指標を確認して改善する。流入数だけでなく、商談化率、契約率、利用開始率、解約率まで確認します。

施策を選ぶときの注意点

複数の施策を同時に始めると、どの施策が契約や継続に影響したのか分かりにくくなります。最初は対象顧客と課題を絞り、検証したい仮説と測定指標を一つずつ決めると改善しやすくなります。

また、2023年時点では個人情報や計測環境の変化もあり、取得できるデータが常に完全とは限りません。計測できない成果を推測で補わず、利用目的や同意、社内のデータ管理方針を確認したうえで施策を運用します。

広告費やツール費だけを見て判断するのも危険です。制作費、営業対応、導入支援にかかる時間など、施策に必要な費用と工数を含めて、継続できるかを検討します。

SaaSマーケティング戦略の要点

SaaSマーケティング戦略では、誰に、どの課題を、どのような価値で解決するのかを明確にすることが出発点です。2023年の施策としては、コンテンツマーケティング、事例、ウェビナー、無料トライアル、PLGなどが考えられますが、サービスの特性によって適した組み合わせは変わります。

まずは対象顧客と事業目標を定め、集客から契約後の定着までを一つの流れとして設計してください。そのうえで、契約数だけでなく利用状況や解約率も確認し、成果の出た施策を継続的に改善することが重要です。