SaaSマーケティングのトレンドとは?

SaaSマーケティングのトレンドとは?

SaaSマーケティングのトレンドとは、SaaS(インターネット経由で利用するソフトウェア)の販売・導入・継続利用を促すマーケティング手法の変化です。現在は、見込み客を集めるだけでなく、無料体験や無料プランで価値を実感してもらい、利用データをもとに契約・継続・追加契約まで支援する考え方が重視されています。

特に注目されるのは、PLG、生成AIの活用、顧客データの統合、リテンションマーケティング、個別最適化、コミュニティ形成の6つです。ただし、すべてのSaaS企業に同じ施策が向くわけではなく、料金体系や商材の複雑さ、導入決裁者によって選ぶべき方法は変わります。

SaaSマーケティングで注目される6つのトレンド

1. PLGで無料体験から利用拡大につなげる

PLG(Product-Led Growth)とは、営業担当者の説明を中心にするのではなく、ユーザーが実際に製品を使うことで導入や契約を進める成長モデルです。無料プラン、無料トライアル、デモ環境などが代表的な接点になります。

PLGでは、単に登録者数を増やすだけでは不十分です。登録後にユーザーが価値を実感するまでの流れを設計する必要があります。

  • 登録直後に利用目的を確認する
  • 初回設定を簡単にする
  • 最初に体験してほしい機能へ案内する
  • チームへの招待やデータ登録を促す
  • 利用状況に応じて有料化やサポートを案内する

個人でも導入しやすく、短時間で効果を確認できるSaaSはPLGと相性がよい傾向があります。一方、導入前の要件定義やセキュリティ審査が必要な大規模サービスでは、営業活動や導入支援と組み合わせる必要があります。

2. 生成AIをコンテンツ作成と顧客対応に活用する

生成AIは、記事やメールのたたき台作成、広告文の案出し、問い合わせの分類、営業活動の要約などに活用されています。ただし、AIが作った文章をそのまま公開するのではなく、対象業界の知識や自社の事例を加えて品質を確認することが重要です。

SaaSマーケティングで生成AIを使う場合は、作業の自動化だけでなく、顧客理解の補助に使うと効果を検討しやすくなります。たとえば、次のような使い方です。

  • 問い合わせ内容から、顧客がつまずいている機能を整理する
  • 商談記録から、失注理由の傾向をまとめる
  • 顧客の業種や課題に応じたメール案を作成する
  • 既存コンテンツの不足テーマを洗い出す
  • オンボーディング用の案内文を複数パターン作成する

個人情報や機密情報を入力する場合は、利用するAIサービスの規約と社内ルールを確認してください。AIの導入効果は、作業時間だけでなく、商談化率、問い合わせ解決率、継続率など目的に合う指標で判断します。

3. 顧客データを統合するRevOpsが広がる

RevOps(レベニューオペレーションズ)は、マーケティング、営業、カスタマーサクセスが個別に動くのではなく、売上に関わる業務とデータを横断して管理する考え方です。

SaaSでは、資料請求から商談、契約、利用、更新まで顧客との接点が長く続きます。部署ごとに異なる顧客情報を持っていると、同じ顧客に重複して連絡したり、契約後の利用状況が営業に共有されなかったりします。

RevOpsを進めるときは、まず次の項目をそろえると整理しやすくなります。

確認する項目 確認内容
顧客情報 企業名、担当者、業種、契約プランなど
行動情報 資料閲覧、問い合わせ、トライアル利用など
営業情報 商談状況、課題、失注理由、受注見込みなど
利用情報 ログイン、主要機能の利用、ユーザー数の変化など
契約情報 契約期間、更新時期、追加契約の状況など

部署ごとのKPIを別々に追うだけではなく、顧客獲得から継続まで一貫した指標を設計することがポイントです。

4. 新規獲得だけでなくリテンションマーケティングを重視する

リテンションマーケティングとは、契約後の顧客がサービスを使い続け、必要に応じて利用を拡大できるよう支援する取り組みです。SaaSは継続課金が基本となるため、契約数だけでなく、解約や利用状況も重要になります。

具体的な施策には、次のようなものがあります。

  • 契約後の初期設定を支援するオンボーディング
  • 利用できていない機能を知らせるメール
  • 導入効果を確認する定期レポート
  • 利用状況に応じたヘルプ記事や動画の案内
  • 更新前の課題確認と活用提案

分析では、解約率だけでなく、顧客がどの段階で利用をやめているかを見ることが大切です。登録後に使われていないのか、初期設定で止まっているのか、一定期間後に利用が減っているのかによって、必要な対策は変わります。

5. ファーストパーティデータを活用する

ファーストパーティデータとは、自社が顧客から直接取得するデータです。資料請求時の入力情報、サービス内の利用状況、問い合わせ内容、アンケート回答などが該当します。

外部環境や広告媒体の仕様に依存しすぎると、顧客の関心や行動を継続的に把握しにくくなります。そのため、顧客の同意や利用目的を明確にしたうえで、自社で得られる情報を適切に管理することが重要です。

ただし、データを集めること自体が目的にならないよう注意が必要です。たとえば、業種や導入目的を取得するなら、メール内容の出し分けや営業優先度の判断など、利用方法まで決めておきます。

6. コンテンツとコミュニティで信頼をつくる

SaaSは、機能や料金だけでなく、導入後に使いこなせるかどうかも選定に影響します。そのため、製品紹介だけでなく、課題の整理や導入手順、活用方法を伝えるコンテンツが役立ちます。

有効なコンテンツの例は次のとおりです。

  • 導入前に確認すべき項目をまとめた資料
  • 業務課題ごとの解決方法を説明する記事
  • 導入手順や設定方法を紹介する動画
  • 導入事例と、導入前後の業務の変化
  • 料金や機能を比較する資料
  • ユーザー同士が質問できるコミュニティ

コンテンツは検索流入だけを目的にせず、営業資料、商談後のフォロー、既存顧客の活用支援にも利用できます。自社の顧客が導入前後に何を知りたいのかを調べ、実際の質問をもとに作成すると内容が具体的になります。

トレンドを選ぶときに見るべき指標

SaaSマーケティングの施策は、流行しているかどうかだけで決めず、自社の課題に合う指標で評価します。施策と指標の対応例は次のとおりです。

課題 検討しやすい施策 見る指標の例
登録はあるが利用開始されない オンボーディング、PLG 初回設定完了率、主要機能の利用率
問い合わせはあるが商談につながらない 顧客情報の整理、コンテンツ改善 商談化率、商談までの期間
契約後に利用が減る 活用支援、リテンション施策 利用頻度、継続率、解約率
営業とカスタマーサクセスの連携が弱い RevOps、顧客データの統合 情報の更新率、引き継ぎ漏れ、更新率
広告費が増えている コンテンツ、既存顧客からの紹介 顧客獲得単価、受注率、流入経路別の売上

指標の定義は企業によって異なります。たとえば「アクティブユーザー」をログインした人とするのか、主要機能を使った人とするのかで結果が変わるため、社内で計測条件をそろえてください。

自社に合うSaaSマーケティングのトレンドを選ぶ方法

最初から複数の施策を同時に始めるのではなく、顧客がどこで止まっているかを確認してから、優先順位を決めます。

  1. 新規訪問、問い合わせ、トライアル、契約、利用、更新の流れを書き出す
  2. 各段階の人数や割合を確認し、最も大きな離脱箇所を特定する
  3. 離脱理由を顧客インタビュー、問い合わせ、利用データから確認する
  4. 原因に合う施策を1つ選び、対象顧客と実施期間を決める
  5. 実施前の数値と実施後の数値を同じ条件で比較する
  6. 効果だけでなく、運用負担や顧客への影響も確認する

たとえば、トライアル登録後の利用開始率が低いなら、広告を増やす前に初期設定や導入案内を見直す方が適している可能性があります。反対に、利用は進んでいるものの契約に至らない場合は、料金プラン、契約条件、営業への引き継ぎなどを確認します。

SaaSマーケティングのトレンドを取り入れる際の注意点

トレンド施策を導入しても、顧客の課題や製品価値と結び付いていなければ成果につながるとは限りません。無料プランを用意しても、利用開始までの設定が難しければ、登録者だけが増えて契約には進まないことがあります。

また、生成AIや顧客データを使う場合は、個人情報、機密情報、データ利用への同意、権限管理を確認する必要があります。マーケティング上の便利さだけでなく、顧客との契約や社内規程に沿って運用してください。

「最新の手法だから導入する」のではなく、自社の顧客がどの段階で困っているのかを確認し、その問題を解決できる施策から始めることが基本です。

まとめ

SaaSマーケティングの主なトレンドは、PLG、生成AI、RevOps、リテンションマーケティング、ファーストパーティデータ、コンテンツとコミュニティの活用です。

ただし、重視すべき施策は、無料体験の利用開始率を上げたいのか、商談を増やしたいのか、解約を減らしたいのかによって変わります。まずは顧客の流れを段階ごとに確認し、最も大きな課題に合う施策を1つ選んで検証することから始めましょう。