SaaSの顧客セグメントは、企業規模や業種だけでなく、「どの課題を解決したいか」「どのように使っているか」「契約後の状態」で分けると、施策に活用しやすくなります。
まずは事業に合う軸を1〜2個に絞り、顧客データを使って分類します。その後、セグメントごとに訴求、料金、営業、オンボーディング、解約防止の方法を変えるのが基本です。
SaaSの顧客セグメントを分ける主な軸
セグメントの分け方には複数の軸があります。すべてを同時に使うのではなく、目的に合う軸を選ぶことが重要です。
| 分類軸 | 分け方の例 | 活用しやすい施策 |
|---|---|---|
| 企業属性 | 業種、従業員数、売上規模、地域 | 広告、営業先の選定、料金設計 |
| 利用目的・課題 | コスト削減、業務効率化、売上向上、管理の標準化 | 訴求内容、導入事例、営業資料 |
| 利用状況 | ログイン頻度、利用機能、利用ユーザー数 | オンボーディング、活用促進、解約防止 |
| 契約・利用段階 | 見込み客、無料登録、試用中、有料契約、休眠 | メール配信、営業フォロー、更新施策 |
| 顧客価値 | 契約金額、継続期間、拡張可能性、サポート負荷 | 営業リソース、カスタマーサクセスの優先順位 |
企業属性で分ける
企業属性は、顧客の会社や組織に関する情報です。BtoB SaaSでは、最初に使いやすい基本的な分類軸です。
- 業種や業界
- 従業員数や拠点数
- 企業の成長段階
- 地域
- 部署や職種
- 既存システムの有無
たとえば、従業員数が少ない企業と大企業では、必要な権限管理、導入手順、決裁方法が異なる可能性があります。ただし、企業規模だけでニーズまで同じだと決めつけないようにします。
解決したい課題や利用目的で分ける
同じ業種や規模の顧客でも、SaaSを導入する理由が違うことがあります。そこで、顧客が何を解決したいのかで分類します。
- 手作業を減らしたい
- 情報を一元管理したい
- ミスや漏れを減らしたい
- 売上や成約率を高めたい
- 社内の状況を把握したい
- 法令や社内ルールへの対応を進めたい
課題別のセグメントは、広告や営業資料のメッセージを変えるときに役立ちます。顧客の業種が同じでも、導入目的が異なるなら、同じ訴求を一律に届けないほうが適切な場合があります。
利用状況や行動で分ける
契約後の顧客は、実際の利用状況によって分けると、必要な支援を判断しやすくなります。
- ログインしているか
- 主要機能を使っているか
- 何人のユーザーが利用しているか
- データ登録や設定が完了しているか
- 問い合わせやサポート利用が多いか
- 一定期間利用がないか
たとえば、契約したものの初期設定が終わっていない顧客と、主要機能を継続的に使っている顧客では、必要な案内が異なります。前者には設定支援、後者には活用範囲を広げる提案が向いています。
契約や利用の段階で分ける
SaaSでは、顧客がどの段階にいるかによって、次に必要な情報が変わります。
- まだサービスを知らない見込み客
- 資料請求や問い合わせをした見込み客
- 無料プランやトライアルを利用している顧客
- 有料契約を開始した顧客
- 継続利用している顧客
- 利用が減少している顧客
- 解約した顧客
トライアル中の顧客に契約後の高度な活用情報だけを送っても、導入判断にはつながらないことがあります。段階に応じて、比較情報、初期設定、活用方法、更新や追加契約の案内を分けます。
目的別に顧客セグメントを組み合わせる
実務では、1つの軸だけでなく、目的に必要な軸を組み合わせます。ただし、細かく分けすぎると対象者が少なくなり、施策を実行しにくくなります。
営業先を決めたい場合
営業先の優先順位を決めるなら、自社サービスとの適合度と導入可能性を組み合わせます。
- 解決できる課題が明確か
- 対象となる部署や担当者がいるか
- 導入に必要な予算や決裁経路があるか
- 既存システムとの連携に大きな障害がないか
- 導入時期が近いか
企業規模が大きいことだけを理由に優先すると、導入までの期間や社内調整の負担が大きくなる場合があります。売上規模だけでなく、課題の強さや導入条件も確認します。
解約を防ぎたい場合
解約防止では、契約金額だけでなく、利用状況の変化を重視します。
- ログインや利用回数が減った顧客
- 主要機能を使っていない顧客
- 導入後も利用ユーザーが増えていない顧客
- 問い合わせや不満の表明があった顧客
- 契約更新日が近い顧客
これらは解約を意味するとは限りませんが、支援が必要な可能性を示すサインです。利用低下の原因を確認したうえで、操作支援、社内展開の支援、別機能の案内などを行います。
アップセルやクロスセルを考えたい場合
追加契約を提案する場合は、利用実績と新たなニーズを見ます。
- 契約中のプランの上限に近づいている
- 複数の部署や拠点で利用している
- 追加機能に関係する操作をすでに行っている
- 利用ユーザー数が増えている
- 現在の機能では対応できない課題を相談している
契約金額が高い顧客に一律で提案するのではなく、追加機能によって実際の課題を解決できるかを確認します。
SaaSの顧客セグメントを分ける手順
最初から複雑な分析を行う必要はありません。目的、データ、施策の順に整理すると、実行しやすくなります。
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セグメントを分ける目的を決める
「広告の訴求を変える」「トライアルからの契約率を高める」「利用が減った顧客を支援する」など、目的を1つ決めます。目的が曖昧なまま分類すると、分けた後に何をすべきか判断できません。
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目的に関係するデータを選ぶ
営業施策なら業種、従業員数、導入課題、決裁状況などを使います。解約防止ならログイン状況、主要機能の利用、契約更新日、問い合わせ履歴などを使います。
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分類条件を具体的に決める
「利用が少ない顧客」ではなく、「直近30日間にログインがなく、主要機能の利用もない顧客」のように、対象条件を明確にします。期間や判定基準が曖昧だと、担当者によって分類結果が変わります。
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各セグメントの人数と特徴を確認する
分類後は、対象顧客が多すぎないか、少なすぎないかを確認します。対象数だけでなく、契約率、継続率、利用状況、問い合わせ内容などにも違いがあるかを見ます。
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セグメントごとの施策を決める
分類しただけで終わらせず、誰に、何を、どの手段で届けるかを決めます。メール、広告、営業連絡、ウェビナー、ヘルプページ、個別支援など、顧客の状態に合わせて方法を選びます。
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施策の結果を確認して条件を見直す
契約率、主要機能の利用率、継続率、問い合わせ数など、目的に合う指標を確認します。差が見られない場合は、分類軸や条件が施策の目的に合っているかを見直します。
セグメントの分け方で失敗しやすい点
顧客セグメントは、細かく分類すればよいわけではありません。施策につながらない分類は、管理の手間だけが増えることがあります。
属性だけで顧客のニーズを決めつける
「大企業だから高度な機能が必要」「特定業種だから同じ使い方をする」とは限りません。属性は入口の分類に使い、導入目的や実際の利用状況と組み合わせて判断します。
セグメントを細かくしすぎる
分類を増やしすぎると、1つのセグメントに対象顧客がほとんどいなくなったり、施策を作り分けられなくなったりします。まずは、施策を変える必要がある大きな違いに絞ります。
一度分けたら見直さない
顧客の課題や利用状況は、契約後に変わることがあります。特に利用状況や契約段階で分ける場合は、データを更新するタイミングを決めておく必要があります。
「高単価」と「重要顧客」を同じ意味で扱う
契約金額が高くても、利用が少なく継続の見込みが低い場合があります。反対に、現在の契約金額は小さくても、利用が広がっている顧客もいます。売上、継続可能性、利用拡大の余地、サポート負荷などを分けて確認します。
迷ったときに使いやすい基本の分け方
初めて顧客セグメントを作る場合は、次の3つを組み合わせると整理しやすくなります。
- 誰か:業種、企業規模、部署、職種
- 何に困っているか:導入目的、課題、優先度
- 現在どう使っているか:契約段階、利用頻度、主要機能の利用状況
たとえば、「従業員数が多い企業」だけでなく、「複数部署で情報共有に課題があり、トライアル中で主要機能を利用している企業」のように分けると、営業や案内の内容を決めやすくなります。
最初に行うことは、セグメントを分ける目的を1つ決め、その目的に直接関係する顧客データを3〜5項目ほど選ぶことです。分類後に施策を変えられるかを基準に、必要な範囲だけ細分化します。







