SaaSの解約理由を分析するには、解約時に選ばれた理由を集計するだけでなく、顧客属性・利用状況・契約期間などと組み合わせて確認します。基本の流れは、解約理由を分類する→顧客データと結び付ける→顧客の声で背景を確認する→改善施策の優先順位を決めるです。
SaaSの解約理由を分析する基本手順
最初に、解約を感覚ではなく比較できるデータに変換します。次の順番で進めると、理由の集計から改善策の検討までつなげやすくなります。
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解約の定義と対象期間を決める
「解約」を、契約の終了、更新見送り、プランのダウングレード、支払い停止のどこまで含めるか決めます。分析期間も、例として「直近6か月」「四半期ごと」のように統一します。
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解約理由を分類する
解約フォームや営業担当者の記録を、同じ基準で分類します。理由の自由記述だけでは集計しにくいため、選択式の大分類と、必要に応じた自由記述を併用します。
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顧客属性や利用状況と組み合わせる
解約理由を全体で集計するだけでなく、企業規模、業種、契約プラン、利用期間、導入経路、利用頻度などのグループ別に比較します。
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解約前の行動を確認する
ログイン回数、主要機能の利用状況、ユーザー数、問い合わせ件数、サポート対応、請求状況などを、解約前の一定期間で確認します。
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顧客へのヒアリングで背景を確かめる
記録上の「料金が高い」「使わなくなった」といった理由だけでは、根本原因が分からないことがあります。可能な範囲で、解約した顧客や解約を検討している顧客に追加で聞きます。
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改善効果と実行しやすさで優先順位を付ける
解約件数が多い理由だけでなく、売上への影響、改善できる可能性、対応に必要な期間を考慮して施策を決めます。
最初に整理するSaaSの解約理由
解約理由は、顧客が選びやすい大分類を用意し、社内で同じ意味になるように定義します。分類例は次のとおりです。
| 大分類 | 具体例 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 料金・予算 | 予算削減、費用対効果への不満、他社のほうが安い | 価格そのものか、利用価値を感じられていないことが原因か |
| 利用不足 | 利用頻度が低い、導入が社内に定着しない | 初期設定、教育、運用設計に問題がないか |
| 機能・性能 | 必要な機能がない、操作しにくい、動作が遅い | 特定の機能や業務が解約に影響しているか |
| サポート・導入支援 | 問い合わせへの対応、導入時の支援に不満がある | どの段階でつまずいたか、対応品質に差がないか |
| 競合・代替手段 | 他社サービスへの乗り換え、自社開発、既存ツールへの回帰 | 競合に負けた決め手や、代替手段が選ばれた理由は何か |
| 顧客側の事情 | 事業縮小、担当者の異動、会社の統合 | 自社で改善できる解約と、外部要因による解約を分けられているか |
| 契約・請求 | 更新手続き、支払い、契約条件に関する問題 | 手続きの分かりにくさや請求エラーがないか |
「料金が高い」という回答は、必ずしも価格だけが原因とは限りません。利用頻度が低く、成果を確認できないために費用に見合わないと判断している可能性もあるため、利用データや導入目的と一緒に確認します。
解約率と解約件数を分けて見る
解約理由の分析では、理由別の件数だけでなく、解約率も確認します。顧客数の異なるプランや顧客グループを、件数だけで比較すると判断を誤ることがあるためです。
顧客数を基準にした解約率の基本的な計算式は、次のとおりです。
顧客解約率 = 対象期間中の解約顧客数 ÷ 期間開始時点の顧客数 × 100
たとえば、期間開始時点の顧客が200社で、その期間中に8社が解約した場合、計算上の顧客解約率は「8 ÷ 200 × 100 = 4%」です。これは計算例であり、実際のSaaSの解約率を示すものではありません。
売上への影響を確認する場合は、顧客数ではなく月次経常収益などを基準にした指標も使います。単価の高い顧客の解約が多い場合、解約件数が少なくても事業への影響が大きいことがあります。
- 解約顧客数:何社が解約したか
- 顧客解約率:顧客全体に対してどの程度解約したか
- 解約金額:解約によって失われた契約金額
- 売上ベースの解約率:売上に対してどの程度の減少が生じたか
顧客解約率と売上ベースの解約率は、対象や計算方法をそろえて比較します。月次と年次など異なる期間の数値を、そのまま比べないことも重要です。
顧客属性別に解約理由を比較する
全顧客を一つにまとめず、同じ条件の顧客ごとに解約理由を比較すると、問題が起きている対象を特定しやすくなります。
| 比較軸 | 分析例 |
|---|---|
| 契約プラン | 無料、標準、高額プランで解約理由が異なるか |
| 契約期間 | 導入直後、初回更新前、長期利用後のどこで解約が多いか |
| 顧客規模 | 小規模企業と大企業で必要な機能や支援が違うか |
| 導入経路 | 広告、紹介、営業、無料トライアルなどで定着率が異なるか |
| 利用状況 | 主要機能の利用回数やログイン状況と解約の関係があるか |
| 導入目的 | 業務効率化、情報共有、コスト削減など目的別に成果を感じているか |
たとえば、全体では「料金」が最多でも、導入直後の顧客では「設定が難しい」、長期利用顧客では「機能不足」が多いというように、顧客の段階によって原因が異なることがあります。
解約前の利用データから予兆を確認する
解約理由の分析では、解約した後のアンケートだけでなく、解約前にどのような変化があったかを見ます。解約に至った顧客と、継続している顧客の行動を同じ条件で比べることがポイントです。
確認するデータには、次のようなものがあります。
- ログイン頻度の変化
- 主要機能を利用したユーザーの割合
- 登録ユーザー数と実際の利用ユーザー数
- 特定機能の利用回数
- 初期設定や連携設定の完了状況
- 問い合わせや不具合報告の内容と件数
- サポートへの返信状況
- 契約更新日までの利用状況
- 請求エラーや支払い遅延の有無
ただし、ログイン回数が減った顧客が必ず解約するとは限りません。業務が効率化されて利用回数が減る場合もあるため、ログイン数だけで判断せず、顧客が達成したい成果や主要機能の利用状況と組み合わせて解釈します。
アンケートとインタビューで解約理由の背景を聞く
アンケートは全体傾向を把握するのに向いており、インタビューは個別の背景や意思決定の流れを理解するのに向いています。どちらか一方だけで判断せず、定量データと顧客の発言を組み合わせます。
解約時アンケートで確認する項目
- 主な解約理由
- その理由が発生した時期
- 期待していた成果
- 実際に得られた成果
- 利用しなかった機能
- 改善されれば継続した可能性がある点
- 他社サービスや代替手段を選んだ理由
- 再利用する可能性
質問数が多すぎると回答されにくくなるため、必須の選択項目を絞り、詳細は任意の自由記述にします。「料金が高い」を選んだ顧客には、「予算の問題」「利用頻度に対して高い」「期待した成果が出なかった」など、追加の選択肢を用意すると分析しやすくなります。
インタビューで聞く順番
インタビューでは、最初から「なぜ解約したのか」と原因を決めつけず、導入から解約までの流れを聞きます。
- 導入時に解決したかった課題を聞く
- 導入後にどのように使ったかを聞く
- 期待していた成果が得られたかを聞く
- 不満や利用停止のきっかけを聞く
- 解約を決めた時期と、決め手を聞く
- 継続するために必要だったことを聞く
「使わなかった」という回答があった場合は、機能を知らなかったのか、設定できなかったのか、必要性を感じなかったのかを分けて確認します。回答者が契約担当者か実際の利用者かによって見える課題が異なることにも注意が必要です。
解約理由から改善施策の優先順位を決める方法
改善施策は、解約理由の件数だけでなく、影響の大きさと改善可能性を合わせて決めます。次の項目で評価すると、対応の優先順位を付けやすくなります。
- 該当する解約顧客の数
- 失われた契約金額
- 同じ問題が起きる可能性のある継続顧客の数
- 原因を自社で改善できる可能性
- 改善に必要な期間と費用
- 改善後に効果を確認する方法
たとえば、導入直後の設定につまずく顧客が多い場合は、初期設定画面の改善、導入ガイド、オンボーディング支援の見直しなどが候補になります。一方、特定の機能不足が高額顧客の解約に関係している場合は、その機能の開発効果と開発コストを比較します。
施策を決める際は、「解約を減らす」という目標だけでなく、対象顧客、変更する内容、確認する指標、確認する時期を明確にします。これにより、施策後に本当に解約理由が変化したかを確認できます。
分析で起こりやすい失敗と対策
「その他」が多すぎる
解約理由を「その他」に集約しすぎると、改善対象が見えません。自由記述を定期的に確認し、一定数集まった内容は新しい分類として追加します。
単一の理由だけで集計する
解約には複数の要因が関係することがあります。主な理由を一つ選んでもらう方法に加え、「影響した理由をすべて選ぶ」設問を用意すると、複合的な背景を把握できます。
解約後の回答だけを信じる
解約時の回答は重要ですが、記憶や表現の仕方に左右されることがあります。契約情報、利用ログ、問い合わせ記録と照合し、回答と行動データが一致しているか確認します。
解約した顧客だけを分析する
継続顧客との違いを比較しないと、解約顧客に多い特徴が本当に解約と関係するのか判断しにくくなります。契約期間や顧客規模などの条件をそろえ、継続顧客と比較します。
「料金が高い」をすぐ値下げにつなげる
料金への不満があっても、値下げが根本解決になるとは限りません。利用価値が伝わっていない、必要な成果が出ていない、競合との差が分からないといった原因を確認してから、価格、プラン、機能、支援内容のどこを見直すか決めます。
SaaSの解約理由分析に必要なデータ項目
最低限、次の項目を顧客単位で結び付けられる状態にしておくと、理由別・顧客別の比較がしやすくなります。
- 顧客ID
- 契約開始日と更新日
- 解約日
- 契約プランと契約金額
- 顧客規模や業種
- 導入経路
- 導入目的
- 解約理由と自由記述
- ログインや主要機能の利用状況
- 問い合わせ・サポート対応の履歴
- 支払い状況
個人情報や利用ログを扱う場合は、利用目的、アクセス権限、保管期間などを社内で定めます。分析に不要な個人情報まで集めず、担当者が特定されない形で扱えるかも確認します。
解約理由を分析するときの結論
SaaSの解約理由を分析する方法は、理由を分類して集計し、顧客属性・契約状況・利用データと比較し、顧客の声で背景を確認することです。
まずは、対象期間と解約の定義をそろえ、解約理由の分類を作ります。そのうえで、件数だけでなく解約率や売上への影響を確認し、解約前の利用状況と継続顧客との差を調べます。最後に、改善できる可能性と事業への影響を基準に施策の優先順位を決めると、分析結果を具体的な改善につなげられます。







