SaaSの新規顧客を獲得する方法とは?

SaaSの新規顧客を獲得する方法とは?

SaaSの新規顧客を獲得するには、ターゲットを明確にしたうえで、見込み顧客に合う集客方法を選び、無料トライアルや商談につなげます。重要なのは、広告や営業の件数を増やすことだけではありません。誰のどの課題を解決するサービスなのかを定め、認知から契約までの流れを測定・改善することが基本です。

SaaSの新規顧客を獲得する基本的な流れ

SaaSの顧客獲得は、次の流れで考えると整理しやすくなります。

  1. 対象顧客と解決する課題を定める
  2. 見込み顧客が情報を探す場所で接点を作る
  3. 資料請求、問い合わせ、無料登録などにつなげる
  4. サービスの価値を体験してもらう
  5. 導入を検討する顧客を営業やサポートで支援する
  6. 契約後の利用を定着させ、継続や紹介につなげる

サービスの価格、導入の難しさ、対象企業の規模によって、適した方法は変わります。低価格で個人でもすぐ使えるサービスはセルフサーブ型、高額で社内調整が必要なサービスは営業や導入支援を組み合わせる方法が向いています。

1. ターゲットと提供価値を明確にする

最初に行うべきことは、「どの顧客に、どのような成果を提供するSaaSか」を具体化することです。対象が広すぎると、広告、コンテンツ、営業資料の内容がぼやけ、必要な顧客に魅力が伝わりにくくなります。

次の項目を整理すると、訴求内容を作りやすくなります。

  • 業種、企業規模、部署、担当者の役職
  • 現在抱えている業務上の課題
  • 課題によって発生している時間、費用、ミス
  • 導入を決める人と、実際に利用する人
  • 既存の代替手段や競合サービス
  • 導入を見送る理由や不安

たとえば「業務効率化ツール」と伝えるだけでは、対象顧客が自社に必要なサービスか判断しにくくなります。「複数拠点を持つ企業の月次報告を効率化するツール」のように、対象と課題を具体化すると、広告やWebサイトのメッセージをそろえやすくなります。

2. 課題を解決するコンテンツを作る

見込み顧客が検索する課題や疑問に答えるコンテンツは、SaaSの認知と比較検討を支える方法です。サービスの機能を並べるだけでなく、導入前に知りたい情報を提供することが大切です。

主なコンテンツには、次のようなものがあります。

  • 課題の原因や解決方法を説明する記事
  • 業務の進め方やチェックリスト
  • 導入事例や利用前後の業務フロー
  • 競合サービスや代替手段との比較
  • 料金、導入手順、セキュリティに関する説明
  • 操作方法を紹介する動画やデモ
  • 課題の整理に使える資料やテンプレート

コンテンツから資料請求や無料登録につなげる場合は、記事の内容と申し込み後の案内を一致させます。記事では業務改善の方法を説明しているのに、申し込み後すぐに契約を勧めると、顧客の期待と実際の体験に差が生じます。

3. 無料トライアルやデモで価値を体験してもらう

SaaSは、説明を読むだけでなく実際に使ってもらうことで価値が伝わりやすくなります。無料トライアル、無料プラン、オンラインデモなどから、サービスの価格や導入難度に合う方法を選びます。

方法 向いているケース 注意点
無料トライアル 顧客が自分で操作しやすく、短期間で価値を確認できるサービス 登録後に使い方が分からないと、利用されないまま終了しやすい
無料プラン 基本機能を長期的に使ってもらい、有料機能へ広げるサービス 無料利用者へのサポート費用や、有料化の条件を設計する必要がある
オンラインデモ 複数人での検討や設定支援が必要なサービス デモの内容を顧客の課題に合わせる必要がある

トライアルでは、登録数だけでなく、初回設定、主要機能の利用、チーム招待などの行動を確認します。顧客が価値を感じるまでに必要な行動を定義し、その行動に進みやすい画面や案内を用意します。

無料トライアルで確認する項目

  • 登録後に最初に行うべきことが分かるか
  • 初期設定に必要な情報や作業が多すぎないか
  • 主要機能を試すまでの手順が短いか
  • 利用中に困ったときのヘルプがあるか
  • 終了日や有料化の条件が分かりやすいか

4. インサイドセールスで見込み顧客を育てる

問い合わせや資料請求をした顧客が、すぐに契約を決めるとは限りません。インサイドセールスは、電話、メール、オンライン会議などで顧客の状況を確認し、検討の進み具合に応じて情報提供する方法です。

すべての見込み顧客に同じ営業をするのではなく、次のような情報で優先順位を付けます。

  • 対象業種や企業規模がサービスの想定に合っているか
  • 資料請求や無料登録の後に、どの機能を利用したか
  • 導入時期が決まっているか
  • 課題が明確になっているか
  • 決裁者や利用部門が検討に参加しているか

検討初期の顧客には課題整理や導入事例を案内し、比較段階の顧客には料金、機能、セキュリティ、導入手順を説明します。顧客の検討段階と関係のない営業連絡を減らすことが、商談の質を高めるポイントです。

5. 導入事例と紹介を活用する

導入事例は、サービスを使った企業の課題、導入前の状況、導入後の変化を伝える方法です。見込み顧客が自社と似た条件の事例を見つけられるように、業種や企業規模だけでなく、解決した業務課題も示します。

事例に含めると分かりやすい項目は次のとおりです。

  • 導入前に困っていたこと
  • サービスを選んだ理由
  • 導入時に行った準備
  • 現場での使い方
  • 導入後に確認できた変化
  • 導入時に苦労した点と対処方法

数値を掲載する場合は、対象期間、比較方法、測定条件を明記します。条件が分からない数値や、顧客の確認を得ていない実績は掲載しないようにします。

既存顧客からの紹介を促す場合は、紹介してほしい顧客像や紹介方法を分かりやすく伝えます。紹介特典を用意する場合は、対象者、適用条件、提供時期を事前に決めておく必要があります。

6. Web広告やSNSを使い分ける

広告は短期間で見込み顧客との接点を作る方法ですが、配信する対象と目的を明確にしなければ費用だけが増える可能性があります。

方法 主な目的 確認したい点
検索連動型広告 課題やサービスを検索している顧客への接点作り 検索語句と広告文、遷移先の内容が一致しているか
SNS広告 属性や関心に基づく認知、資料請求、無料登録 対象顧客に届いているか、広告からの行動につながっているか
リターゲティング広告 サイト訪問後に検討を続けている顧客への再接触 配信対象、表示頻度、個人情報や広告規制への対応
業界メディアへの掲載 特定業界の担当者への認知や資料請求 読者層、掲載形式、成果の測定方法

広告の評価はクリック数だけでなく、登録、商談、契約まで確認します。クリックが多くても契約につながらない場合は、広告の対象、訴求内容、ランディングページ、申し込み後の営業対応を順番に見直します。

7. パートナーや販売代理店と提携する

自社だけでは接点を作りにくい業界や地域を開拓する場合は、販売代理店、導入支援会社、業務コンサルティング会社などとの提携が選択肢になります。

提携前には、次の条件を確認します。

  • 紹介先が自社のターゲットと一致しているか
  • 紹介だけか、商談、契約、導入支援まで担当するか
  • 手数料や支払いの条件が明確か
  • 顧客情報の取り扱い方法が決まっているか
  • サービス内容や禁止事項を正しく説明できるか
  • 導入後の問い合わせ窓口が明確か

提携先を増やすこと自体を目的にせず、どの経路からどのような顧客が契約し、継続しているかを確認します。紹介数が多くても、対象顧客との適合度が低ければ、営業やサポートの負担が増えることがあります。

SaaSの新規顧客獲得で確認する指標

顧客獲得の改善には、認知から契約後までの各段階を分けて測定します。売上だけを見ていると、どこに問題があるのか判断しにくくなります。

段階 確認する指標の例 分かること
認知 表示回数、サイト訪問数、指名検索 サービスを知る人が増えているか
興味・検討 資料請求率、問い合わせ率、無料登録率 情報を見た人が次の行動に進んでいるか
利用 初回設定率、主要機能の利用率、継続利用率 登録後にサービスの価値を体験できているか
営業・契約 商談化率、受注率、顧客獲得単価 商談や集客にかけた費用が契約につながっているか
契約後 解約率、継続率、アップセル率 導入後も価値を感じてもらえているか

顧客獲得単価は、仮に集客と営業にかかった費用が100万円で、新規契約が10件なら、計算上は「100万円÷10件」で1件あたり10万円です。ただし、費用に含める範囲や契約の定義によって結果は変わるため、社内で計算条件をそろえる必要があります。

短期の契約数だけでなく、継続期間や解約も確認します。獲得した顧客がすぐに解約する場合は、集客方法だけでなく、サービスの適合度、初期設定、料金、導入支援にも原因がある可能性があります。

予算や体制に合わせた選び方

最適な獲得方法は、SaaSの価格や営業体制によって異なります。すべての施策を同時に始めるのではなく、顧客が情報を探す場所と、社内で対応できる範囲から優先します。

  • 低価格で操作が簡単なSaaS:検索向けコンテンツ、無料トライアル、プロダクト内の案内を優先する
  • 中価格帯で比較検討が必要なSaaS:導入事例、資料請求、メール案内、オンラインデモを組み合わせる
  • 高価格で社内調整が必要なSaaS:ターゲット企業への営業、商談、導入支援、セキュリティ説明を重視する
  • 特定業界向けのSaaS:業界メディア、展示会、専門パートナー、既存顧客からの紹介を検討する

最初は対象顧客を限定し、1つの集客経路から契約までの流れを確認すると、改善点を見つけやすくなります。成果が確認できた施策を広げる前に、営業やサポートが対応できる顧客数も確認してください。

新規顧客を増やす前に見直したいポイント

集客を増やしても、サービスの説明や申し込みの流れに問題があると契約につながりません。施策を拡大する前に、次の点を確認します。

  • 誰向けのサービスか、Webサイトの冒頭で分かるか
  • 顧客が得られる効果を、機能ではなく業務上の変化で説明しているか
  • 料金、無料期間、契約条件が分かるか
  • 導入事例やセキュリティ情報を確認できるか
  • 問い合わせや登録後の返信が遅れていないか
  • 無料登録後に、価値を体験するまでの案内があるか
  • 広告や営業で伝えた内容と、実際のサービスが一致しているか

SaaSの新規顧客獲得では、最初にターゲットと課題を絞り、顧客が情報を探す場所に接点を作ります。その後、無料トライアルやデモで価値を体験してもらい、利用状況と契約後の継続まで測定しながら改善することが重要です。まずは顧客像、獲得経路、契約までの各段階の指標を整理し、改善する箇所を1つに絞って取り組みましょう。